注目論文:高齢者におけるRSVワクチン(Abrysvo)の実臨床での高い有効性
呼吸器内科
カリフォルニアのKaiser Permanenteのデータを用いた、60歳以上におけるRSVワクチン(Abrysvo)の有効性を検証したtest-negative case-control study(検査陰性例を対照とする症例対照研究)です。市販後初シーズンの解析において、救急外来受診や入院を要する急性呼吸器疾患(ARI)に対し、92%という極めて高い有効性(VE)が示されました。 特筆すべきは、75歳以上の超高齢者や基礎疾患を有するハイリスク群、さらにはICU入室などを要する重症例においても同等の高い有効性が確認された点です。本邦でも高齢者へのRSVワクチン接種の意義が議論されていますが、この実臨床データ(RWE)は、特に重症化リスクの高い患者さんへの推奨を強く後押しする重要なエビデンスと言えます。
Estimated Vaccine Effectiveness for Respiratory Syncytial Virus-Related Acute Respiratory Illness in Older Adults: Findings From the First Postlicensure Season 高齢者におけるRSV関連急性呼吸器疾患に対する推定ワクチン有効性:市販後初シーズンの知見
Tartof SY, Aliabadi N, Goodwin G, et al. Clin Infect Dis. 2025 Oct 21:ciaf496.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41117531/
Tartof SY, Aliabadi N, Goodwin G, et al. Clin Infect Dis. 2025 Oct 21:ciaf496.
背景: RSウイルス(RSV)は高齢者において重篤な呼吸器疾患を引き起こす重要な原因です。先行研究では、RSVpreFワクチン(Abrysvo; Pfizer)が高齢者におけるRSV関連下気道疾患による救急外来受診や入院を予防することを示しました。本研究では、ハイリスク者における重症疾患を含む、急性呼吸器疾患(ARI)のエンドポイントに対する有効性を評価しました。
研究デザイン: Kaiser Permanente Southern Californiaにおいて、2023年11月24日から2024年4月9日までの間にARIで救急外来受診または入院した60歳以上の成人を対象とした、後ろ向きtest-negative case-control studyを実施しました。症例群はRSV陽性患者とし、対照群はRSV、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザ、SARS-CoV-2が陰性で、かつワクチン予防可能でない病原体が陽性の患者としました。曝露因子はARI診断の21日以上前のRSVpreF接種としました。多変量ロジスティック回帰を用いて調整オッズ比からワクチン有効性(VE)を算出しました。
結果: RSV検査が行われた8,965件のARI救急受診/入院が含まれました。患者の7.8%がRSV陽性であり、そのうちRSVpreF接種者は0.3%であったのに対し、対照群では3.6%でした。調整後のVEは92%(95%信頼区間 64%-98%)でした。 リスク因子を有する患者(VE 92% [65%-98%])、75歳以上の超高齢者層(VE 95% [60%-99%])、重篤な転帰(ICU入室、人工呼吸管理、呼吸不全、昇圧剤使用、死亡)をとった患者(VE 90% [16%-99%])、および重症疾患(酸素投与を要する救急受診または入院)の患者(VE 92% [35%-99%])においても、同様に高いVEが推定されました。
結論: 高齢者において、RSVpreFはRSV関連ARIによる入院や救急外来受診に対して高いワクチン有効性を示し、これにはハイリスクサブグループや重篤な転帰に対する有効性も含まれました。RSVワクチン接種プログラムは、重症化リスクが最も高い集団を保護することができます。
研究デザイン: Kaiser Permanente Southern Californiaにおいて、2023年11月24日から2024年4月9日までの間にARIで救急外来受診または入院した60歳以上の成人を対象とした、後ろ向きtest-negative case-control studyを実施しました。症例群はRSV陽性患者とし、対照群はRSV、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザ、SARS-CoV-2が陰性で、かつワクチン予防可能でない病原体が陽性の患者としました。曝露因子はARI診断の21日以上前のRSVpreF接種としました。多変量ロジスティック回帰を用いて調整オッズ比からワクチン有効性(VE)を算出しました。
結果: RSV検査が行われた8,965件のARI救急受診/入院が含まれました。患者の7.8%がRSV陽性であり、そのうちRSVpreF接種者は0.3%であったのに対し、対照群では3.6%でした。調整後のVEは92%(95%信頼区間 64%-98%)でした。 リスク因子を有する患者(VE 92% [65%-98%])、75歳以上の超高齢者層(VE 95% [60%-99%])、重篤な転帰(ICU入室、人工呼吸管理、呼吸不全、昇圧剤使用、死亡)をとった患者(VE 90% [16%-99%])、および重症疾患(酸素投与を要する救急受診または入院)の患者(VE 92% [35%-99%])においても、同様に高いVEが推定されました。
結論: 高齢者において、RSVpreFはRSV関連ARIによる入院や救急外来受診に対して高いワクチン有効性を示し、これにはハイリスクサブグループや重篤な転帰に対する有効性も含まれました。RSVワクチン接種プログラムは、重症化リスクが最も高い集団を保護することができます。