注目論文:英国における2024年XBB.1.5およびJN.1ワクチンの入院予防効果

呼吸器内科
英国からの最新のワクチン有効性(VE)に関する報告です。高齢者およびハイリスク群を対象とした2024年の接種キャンペーン(春季:XBB.1.5、秋季:JN.1)の効果を、実臨床データ(Test-Negative Case-Control)で評価しています。

結果として、いずれのワクチンも入院予防に対して「中等度(Moderate)」の効果が示されました。XBB.1.5(春)はピーク時45%でしたが、約半年(25-29週)で効果は6%とほぼ消失しています。一方、JN.1(秋)はピークが43%(10-14週)とやや遅く、20週時点でも34%の効果を維持していました。

初期のワクチンほどの高いVEではないものの、これは集団全体の免疫(感染+ワクチン)が成熟したことや、多様な変異株の流行を反映していると考察されています。ワクチンの効果が時間とともに減衰する事実は変わらず、特にハイリスク群に対する定期的な(おそらくは最新株に対応した)接種の重要性を再確認するデータです。
Effectiveness of spring 2024 (XBB.1.5) and autumn 2024 (JN.1) COVID-19 vaccination against hospitalisation in England
英国における2024年春季(XBB.1.5)および秋季(JN.1)COVID-19ワクチン接種の入院に対する有効性
Abdul Aziz N, Kirsebom FCM, Allen A, Andrews N.
Vaccine. 2025 Nov 20;67:127870
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41135289/
背景: 英国では、2024年春のCOVID-19ワクチンキャンペーンを通じて、75歳以上の成人と免疫抑制者を対象にOmicron XBB.1.5ワクチンが提供されました。2024年秋のキャンペーンでは、65歳以上の成人と臨床的リスク群を対象にOmicron JN.1ワクチンが提供されました。本研究は、2024年のキャンペーンで提供されたワクチンのCOVID-19入院に対するワクチン有効性(VE)と防御効果の減衰を評価します。

研究デザイン: COVID-19による入院に対し、2024年春季および秋季のCOVID-19ワクチンプログラムでそれぞれ提供されたXBB.1.5およびJN.1ワクチンの有効性を推定するために、Test-Negative Case-Control study(検査陰性例対照研究)デザインを用いました。ロジスティック回帰を使用し、COVID-19で入院した適格者におけるVEを算出しました。曝露変数は各キャンペーンでのワクチン接種状況、アウトカム変数はSARS-CoV-2検査結果とし、共変量を調整しました。製造業者別の分析も別途実施しました。

結果: 2024年春に投与されたXBB.1.5ワクチンは中等度の防御効果を示し、2~4週以内にピーク45%(95% CI: 37-52%)に達しましたが、25~29週までに6%(95% CI: -11-21%)に低下しました。2024年秋のJN.1ワクチンのVEは10~14週で43%(95% CI: 34-51%)の有効性をピークとし、20週までに34%(95% CI: 22-44%)に低下しました。JN.1ワクチンの長期的な防御効果を評価するには、さらなるモニタリングが必要です。秋季キャンペーンにおいて、製造業者間で有効性に有意な差は認められませんでした。

結論: 英国の2024年春季および秋季のCOVID-19ワクチンキャンペーンで配布されたXBB.1.5およびJN.1ワクチンは、接種対象となった高齢者において、接種後少なくとも20週間にわたりCOVID-19による入院に対して中等度の防御効果を提供しました。以前のキャンペーンと比較してVEが低いのは、この期間中の集団レベルの免疫増強と多様な変異株の流行を反映している可能性があります。