注目論文:オミクロン流行期におけるパキロビッド®(N/R)の実臨床での入院予防効果

呼吸器内科
カナダ・ケベック州の大規模な実臨床データ(RWE)を用いた後方視的コホート研究です。オミクロン株流行期において、高リスク外来患者へのニルマトレルビル・リトナビル(N/R、パキロビッド®)投与が入院リスクをどれだけ減らすかを傾向スコアマッチングで検証しています。結果は、ワクチン接種状況にかかわらず、入院リスクを74%減少し(RR 0.26)、NNT(治療必要数)は15と良好でした。特に重度の免疫不全患者(NNT 7)やワクチン未接種者(NNT 9)でのベネフィットが大きく、ワクチン接種完了者でもNNT 17と、高リスク集団へのN/R投与を強く支持する重要なエビデンスです。
Real-World Effectiveness of Nirmatrelvir-Ritonavir in Preventing Coronavirus Disease 2019-Associated Hospitalization: A Population-Based Cohort Study in the Province of Québec, Canada.
COVID-19関連入院予防におけるニルマトレルビル・リトナビルの実臨床での有効性:カナダ・ケベック州における集団ベースのコホート研究
Kaboré JL, Laffont B, Diop M, Tardif MR, Turgeon AF, Dumaresq J, Luong ML, Cauchon M, Chapdelaine H, Claveau D, Brosseau M, Haddad E, Benigeri M.
Clin Infect Dis. 2025 Oct 29:ciaf145
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41160182/
背景: ニルマトレルビル・リトナビル(N/R)は、オミクロン株流行以前にCOVID-19による入院および死亡を減少させることが示されていましたが、最新の実臨床エビデンス(RWE)研究が必要です。本研究の目的は、高リスクの外来患者においてN/RがCOVID-19関連の入院リスクを減少させるかどうかを評価することでした。

研究デザイン: 2022年3月15日から10月15日までの期間に、ケベック州の臨床管理データベースのデータを用い、SARS-CoV-2感染外来患者を対象とした後方視的コホート研究を実施しました。傾向スコアマッチング(PSM)を用いて、N/Rによる治療を受けた外来患者と受けなかった患者を比較しました。指標日(index date)から30日以内に発生したCOVID-19関連入院の相対リスク(RR)をポアソン回帰を用いて評価しました。

結果: 合計14,756名の治療を受けた外来患者が対照群とマッチングされました。ワクチン接種状況にかかわらず、N/R治療は入院のRRを74%減少させました(RR 0.26 [95% CI .23-.29]; 治療必要数 [NNT] 15)。この効果は、一次ワクチン接種コースが未完了の外来患者でより顕著でした(RR 0.13 [95% CI .08-.20]; NNT 9)。一次ワクチン接種コースを完了した患者においても、年齢や最終ワクチン接種からの期間にかかわらず、ベネフィットが認められました(RR 0.28 [95% CI .25-.32]; NNT 17)。一次ワクチン接種コースを完了した高リスク外来患者のサブグループ解析では、重度の免疫不全患者において、最終ワクチン接種からの期間にかかわらず、N/R治療が入院のRRを統計学的に有意に減少させることが示されました(RR 0.28 [95% CI .21-.36]; NNT 7)。

結論: N/Rは、ワクチン接種が未完了および完了している高リスクの外来患者、ならびに免疫不全患者において、年齢や最終ワクチン接種からの期間にかかわらず、COVID-19関連の入院リスクを減少させます。