ワクチン接種後の体調不良が副反応なのか、あるいは先行する無症候性感染によるLong COVIDなのか、という問いは臨床現場で頻繁に遭遇します。本総説は、症状の出現タイミング、詳細な症状の聴取、そして診断ツールの活用といった体系的なアプローチの重要性を再確認させてくれます。特に発症時期の丁寧な評価が鑑別の鍵となります。患者の不安に応え、ワクチンの信頼性を維持するためにも、我々臨床医が整理しておくべき重要な視点です。

背景： COVID-19ワクチンの世界的な展開は、Long COVID（PASC：SARS-CoV-2感染の後遺症）との症状の重複により診断上の課題を生じさせており、ワクチンの安全性プロファイル、Long COVIDの臨床像、およびエビデンスに基づく鑑別戦略に関する包括的なレビューが必要とされています。

方法： 2020年12月から2025年6月までの期間に、PubMed、Scopus、Web of Scienceを用いて文献検索を実施し、査読付き論文、臨床試験、コホート研究を対象としました。

内容： 本レビューによれば、COVID-19ワクチンは強固な安全性を維持しており、心筋炎や血小板減少症候群を伴う血栓症などの有害事象は稀です。一方、Long COVIDはSARS-CoV-2感染生存者の10-40%に影響を及ぼし、倦怠感、認知機能障害、呼吸困難などの症状を呈します。これらの病態の鑑別は、症状出現のタイミングの慎重な分析、詳細な症状の特徴付け、および高度な診断ツールの使用に依存します。

結論： 正確な診断には体系的な臨床評価が不可欠であり、これは適切な患者管理、ワクチン接種に対する国民の信頼の維持、および将来の研究の指針にとって極めて重要です。診断バイオマーカーの検証、標的治療の開発、長期的な転帰のモニタリングのためにはさらなる研究が必要であり、標準化された国際的な登録制度と学際的な協力が、ケアを改善しこの分野を発展させるための重要な優先事項として特定されています。