注目論文:重症喘息における「寛解」の再定義:疾患活動性と不可逆的ダメージの区別
呼吸器内科
生物学的製剤の登場で、重症喘息治療は「寛解」を目指す時代に入りました。しかし、現在の寛解定義は症状中心で、疾患の本質を捉えきれていません。本稿は、喘息の病態を修飾可能な「疾患活動性」と不可逆的な「ダメージ」に明確に区別し、寛解を「疾患生物学の安定化」と再定義することを提唱する非常に重要な概念論文です。特に、不可逆的な変化が起こる前の「at-risk asthma」という段階で介入することの重要性を強調しており、これは疾患修飾を目指す上での大きなパラダイムシフトと言えます。今後の喘息診療や研究の方向性を定める上で、重要な論文です。
Reframing remission in severe asthma: a conceptual framework for distinguishing disease activity versus damage
重症喘息における寛解の再構築:疾患活動性とダメージを区別するための概念的フレームワーク
Porsbjerg C, Rupani H, Brannan JD, et al.
Lancet Respir Med. 2025 Sep 29:S2213-2600(25)00299-1.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41038212/
重症喘息における寛解の再構築:疾患活動性とダメージを区別するための概念的フレームワーク
Porsbjerg C, Rupani H, Brannan JD, et al.
Lancet Respir Med. 2025 Sep 29:S2213-2600(25)00299-1.
要約:
生物学的製剤の成功により、中等症から重症の喘息において寛解は達成可能な治療目標となりつつある。しかし、症状コントロール、呼吸機能、ステロイド減量に焦点を当てた現在の寛解定義は精度を欠き、後ろ向きにしか確認できず、疾患進行を駆動する根底の病態を反映していない。このギャップは、定義の臨床的応用性を制限し、早期の疾患修飾介入の機会を曖昧にする可能性がある。
本シリーズ論文では、疾患負荷に寄与する修飾可能な「疾患活動性」と、不可逆的な「リモデリング」や「併存疾患関連因子」とを区別することを中心とした、寛解を理解し達成するための洗練されたフレームワークを提案する。我々は、高い疾患活動性と免疫調節不全を特徴とする重要な段階として「at-risk asthma(リスクのある喘息)」の概念を導入し、この段階でのタイムリーな介入が不可逆的な気道および肺外のダメージを防ぎ、長期的な疾患修飾を支援する可能性を論じる。
また、4つの主要な病態生理学的ドメイン(気道過敏性、免疫過敏性、免疫リモデリング、構造的リモデリング)を概説し、その時間的変化と治療反応性への影響を記述する。最終的に、評価と介入のためのドメインベース戦略を提示し、標的治療を根底にあるメカニズムに結びつける。このアプローチは、寛解を単なる症状の消失ではなく、「疾患生物学の安定化」として再定義する。このようなフレームワークは、長期的なアウトカムを改善し、不可逆的な疾患への過剰治療を防ぐために不可欠となるだろう。
生物学的製剤の成功により、中等症から重症の喘息において寛解は達成可能な治療目標となりつつある。しかし、症状コントロール、呼吸機能、ステロイド減量に焦点を当てた現在の寛解定義は精度を欠き、後ろ向きにしか確認できず、疾患進行を駆動する根底の病態を反映していない。このギャップは、定義の臨床的応用性を制限し、早期の疾患修飾介入の機会を曖昧にする可能性がある。
本シリーズ論文では、疾患負荷に寄与する修飾可能な「疾患活動性」と、不可逆的な「リモデリング」や「併存疾患関連因子」とを区別することを中心とした、寛解を理解し達成するための洗練されたフレームワークを提案する。我々は、高い疾患活動性と免疫調節不全を特徴とする重要な段階として「at-risk asthma(リスクのある喘息)」の概念を導入し、この段階でのタイムリーな介入が不可逆的な気道および肺外のダメージを防ぎ、長期的な疾患修飾を支援する可能性を論じる。
また、4つの主要な病態生理学的ドメイン(気道過敏性、免疫過敏性、免疫リモデリング、構造的リモデリング)を概説し、その時間的変化と治療反応性への影響を記述する。最終的に、評価と介入のためのドメインベース戦略を提示し、標的治療を根底にあるメカニズムに結びつける。このアプローチは、寛解を単なる症状の消失ではなく、「疾患生物学の安定化」として再定義する。このようなフレームワークは、長期的なアウトカムを改善し、不可逆的な疾患への過剰治療を防ぐために不可欠となるだろう。