注目論文:COVID-19感染は呼吸器2型炎症性疾患のリスクを上昇させ、ワクチンは保護的に働く

呼吸器内科
COVID-19感染が喘息や慢性副鼻腔炎といった呼吸器の2型炎症性疾患の新規発症リスクを高める一方、ワクチン接種は逆に保護的に働く可能性を示した米国の非常に大規模なコホート研究です。ウイルス感染が喘息のトリガーとなることは臨床的によく経験しますが、新規発症リスクをここまで大規模なデータで示した点は重要です。ワクチンが保護的に働くという結果は非常に興味深く、今後の研究が待たれます。Long COVIDなどで遷延する咳や鼻症状を診る際に、2型炎症の関与を考慮する根拠の一つになるかもしれません。
COVID-19 infection raises respiratory type 2 inflammatory disease risk, whereas vaccination is protective
COVID-19感染は呼吸器2型炎症性疾患のリスクを上昇させる一方、ワクチン接種は保護的に働く
Olbrich H, Preuß SL, Kridin K, Hernandez G, Thaçi D, Ludwig RJ, Curman P.
J Allergy Clin Immunol. 2025 Aug 12:S0091-6749(25)00858-9.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40812431/
背景:
2019年コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染とワクチン接種が2型炎症性疾患に与える影響は不明確である。ウイルス感染は免疫調節不全を引き起こす可能性があるが、COVID-19の感染とワクチン接種が様々な臓器系の2型炎症性疾患にどの程度影響するかは、まだ十分に調査されていない。

研究デザイン:
1億1800万人以上の患者を含む米国の電子カルテデータベースを用いて、大規模な後ろ向きマッチドコホート研究を実施した。COVID-19感染者(n = 973,794)、COVID-19ワクチン接種者(n = 691,270)、非曝露対照群(n = 4,388,409)の3つのコホートを定義した。傾向スコアマッチングにより、人口統計学的および臨床的共変量を均衡させた。3ヶ月間の追跡期間における新規の喘息、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎のハザード比(HR)を算出した。

結果:
COVID-19感染は、喘息(HR 1.656、95% CI 1.590-1.725)、アレルギー性鼻炎(HR 1.272、95% CI 1.214-1.333)、慢性副鼻腔炎(HR 1.744、95% CI 1.671-1.821)のリスクを有意に増加させた。アトピー性皮膚炎や好酸球性食道炎のリスクは変化しなかった。対照的に、ワクチン接種は喘息(HR 0.678、95% CI 0.636-0.722)および慢性副鼻腔炎(HR 0.799、95% CI 0.752-0.850)のリスクを低下させた。直接比較では、感染による呼吸器2型炎症性疾患のリスクは、ワクチン接種に比べて2〜3倍高かった。

結論:
COVID-19感染は呼吸器2型炎症性疾患のリスク上昇と関連しているが、ワクチン接種は保護的に働くようである。