注目論文:RSウイルス予防:ニルセビマブ、実臨床でも高い有効性を示す

呼吸器内科
2023年に登場したRSウイルス(RSV)予防薬である長時間作用型モノクローナル抗体ニルセビマブと各種ワクチンについて、待望の実臨床(リアルワールド)での有効性をまとめたシステマティックレビューです。約760万人を対象とした解析の結果、乳児に対するニルセビマブはRSV関連の入院を約81%減少させるという、臨床試験に劣らない極めて高い有効性が示されました。高齢者向けワクチンも入院を約80%減らす効果が確認されています。一方で、妊婦へのRSVワクチンについては有効性データがまだ不足しており、今後の報告が待たれます。特に小児科領域において、ニルセビマブがRSVによる重症化を防ぐための強力な武器であることが、実臨床データによって裏付けられた意義は非常に大きいと言えます。
Real-world effectiveness and safety of nirsevimab, RSV maternal vaccine and RSV vaccines for older adults: a living systematic review and meta-analysis
ニルセビマブ、RSV母体ワクチン、および高齢者向けRSVワクチンの実世界における有効性と安全性:リビングシステマティックレビューおよびメタアナリシス
Lee B, Trusinska D, Ferdous S, et al.
Thorax. 2025 Sep 10:thorax-2025-223376.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40930981/
背景:
長時間作用型モノクローナル抗体であるニルセビマブおよびRSウイルス(RSV)ワクチンは、2023年に重症RSV関連疾患の予防のために利用可能となりました。臨床試験では良好な有効性と安全性が示されましたが、その限定的な組み入れ基準、小さなサンプルサイズ、短い追跡期間は一般化可能性を制限します。我々は、ニルセビマブ、RSV母体ワクチン、および高齢者向けRSVワクチンの有効性と安全性に関する実世界のエビデンスを要約することを目的としました。

研究デザイン:
リビングシステマティックレビューおよびメタアナリシスを実施し、3つのデータベースで5ヶ月ごとに更新検索を行いました。対象となる研究は2022年12月1日から2025年3月10日までに発表されたものとしました。ニルセビマブおよびRSVワクチンの有効性に関するメタアナリシスは、ランダム効果モデルを用いて行いました。安全性データは叙述的に要約しました。

結果:
合計50の論文が組み入れられ、約760万人が対象となりました。ニルセビマブは、RSV関連の救急外来受診に対して80.7%(95%信頼区間[CI]: 75.7%~85.7%; 7研究)、入院に対して80.7%(95%CI: 76.1%~85.2%; 17研究)、集中治療室入室に対して75.6%(95%CI: 63.3%~87.9%; 8研究)の有効性を示しました。高齢者向けRSVワクチンのRSV関連入院に対する有効性は79.6%(95%CI: 73.8%~85.3%; 3研究)でした。RSV母体ワクチンの有効性データはありませんでした。ニルセビマブに関する重篤な有害事象は報告されませんでしたが、高齢者におけるRSVワクチンでは100万回接種あたり10件未満のギラン・バレー症候群の症例が報告されました。RSV母体ワクチンに関する重篤な有害事象は報告されませんでしたが、エビデンスは限定的でした。

結論:
我々のレビューは、乳児におけるRSV関連の医療利用を減らす上でのニルセビマブの高い有効性と、良好な安全性プロファイルを示しました。妊婦および高齢者におけるRSVワクチンを評価するためには、さらなるエビデンスが必要です。