注目論文:喀痰qPCRによるニューモシスチス肺炎(PCP)の除外診断
呼吸器内科
ニューモシスチス肺炎(PCP)の診断は、気管支鏡によるBALFのqPCRが有用とされますが、侵襲性が課題です。本研究は、免疫不全患者において、ペア検体である喀痰とBALFの P. jirovecii 真菌量を前向きに比較検討しています。結果として、BALFのカットオフ値(2,613 copies/μL)は感度82.6%、特異度96.7%と良好でした。一方、喀痰のカットオフ値(474 copies/μL)は感度65.2%と中程度であるものの、特異度89.0%と高値でした。喀痰qPCRはBALFの代替にはなり得ませんが、特異度が高い(=偽陽性が少ない)ことから、臨床的にPCPの可能性が低い患者において、その除外診断に役立つ可能性を示唆しています。喀痰で陰性であれば、不要な気管支鏡検査を回避できるケースが増えるかもしれません。臨床応用にあたっては、感度の低さ(見逃しのリスク)を十分考慮する必要があります。
A prospective comparison of fungal load in paired sputum and bronchoalveolar lavage fluid for Pneumocystis pneumonia diagnosis: Clinical thresholds and diagnostic accuracy.
ニューモシスチス肺炎診断のための喀痰および気管支肺胞洗浄液ペア検体における真菌量の前向き比較:臨床的閾値と診断精度
Phoompoung P, Thampanyawat P, Jitmuang A, Kunwipakorn K, Phornkhakhanumphorn T, Thanintorn N, Sarasombath PT.
J Microbiol Immunol Infect. 2025 Aug 30:S1684-1182(25)00184-7.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40897648/
ニューモシスチス肺炎診断のための喀痰および気管支肺胞洗浄液ペア検体における真菌量の前向き比較:臨床的閾値と診断精度
Phoompoung P, Thampanyawat P, Jitmuang A, Kunwipakorn K, Phornkhakhanumphorn T, Thanintorn N, Sarasombath PT.
J Microbiol Immunol Infect. 2025 Aug 30:S1684-1182(25)00184-7.
背景:
免疫不全肺炎患者におけるニューモシスチス肺炎(PCP)診断のための非侵襲的検体(喀痰)と気管支肺胞洗浄液(BALF)の診断性能と精度を比較すること。
研究デザイン:
免疫不全患者112名を対象とした前向き研究で、同一患者から採取した喀痰とBALFのペア検体における P. jirovecii の真菌量を評価した。患者は、qPCRの結果を盲検化した基準に基づき、確定PCP、推定PCP、非PCPに分類された。最適な診断カットオフ値を導出し、検体種間の一致性を分析した。
結果:
BALFの真菌量閾値 2,613 DNA copies/μLは、PCP診断において高い感度(82.6 %, 95 % CI: 62.9-93.0)と特異度(96.7 %, 95 % CI: 90.8-99.1)を示した。喀痰では、カットオフ値 474 DNA copies/μLが中程度の感度(65.2 %, 95 % CI: 44.9-81.2)と高い特異度(89.0 %, 95 % CI: 80.9-93.9)を示し、臨床的疑いが低い患者においてPCPの除外を可能にした。喀痰中の真菌量はBALFと良好に相関したが、確定PCP症例ではより大きなばらつきを示し、高リスク患者における非侵襲的診断の限界が示された。
結論:
喀痰の非侵襲的な真菌量測定は、免疫不全肺炎患者においてPCPを除外するための有用なツールを提供し、気管支鏡検査の必要性を減らす可能性がある。
免疫不全肺炎患者におけるニューモシスチス肺炎(PCP)診断のための非侵襲的検体(喀痰)と気管支肺胞洗浄液(BALF)の診断性能と精度を比較すること。
研究デザイン:
免疫不全患者112名を対象とした前向き研究で、同一患者から採取した喀痰とBALFのペア検体における P. jirovecii の真菌量を評価した。患者は、qPCRの結果を盲検化した基準に基づき、確定PCP、推定PCP、非PCPに分類された。最適な診断カットオフ値を導出し、検体種間の一致性を分析した。
結果:
BALFの真菌量閾値 2,613 DNA copies/μLは、PCP診断において高い感度(82.6 %, 95 % CI: 62.9-93.0)と特異度(96.7 %, 95 % CI: 90.8-99.1)を示した。喀痰では、カットオフ値 474 DNA copies/μLが中程度の感度(65.2 %, 95 % CI: 44.9-81.2)と高い特異度(89.0 %, 95 % CI: 80.9-93.9)を示し、臨床的疑いが低い患者においてPCPの除外を可能にした。喀痰中の真菌量はBALFと良好に相関したが、確定PCP症例ではより大きなばらつきを示し、高リスク患者における非侵襲的診断の限界が示された。
結論:
喀痰の非侵襲的な真菌量測定は、免疫不全肺炎患者においてPCPを除外するための有用なツールを提供し、気管支鏡検査の必要性を減らす可能性がある。