注目論文:過去10年以上で最悪の入院率を記録した米国2024-25年インフルエンザシーズン

呼吸器内科
米国CDCからのMMWRレポートです。2024-25年のインフルエンザシーズンは、入院率が人口10万人あたり127.1人と、2010-11年シーズン以降で最も高い、まさに高重症度のシーズンでした。臨床医として注目すべきは、入院患者のワクチン接種率が32.4%と低かった点です。また、入院患者の約9割が基礎疾患を有していたことも、我々が日常診療で診る患者層のリスクを再確認させます。このデータは、インフルエンザワクチンの重要性と、特にハイリスク患者に対する迅速な抗ウイルス薬投与の必要性を改めて浮き彫りにしています。日本の今冬のシーズンに向けた重要な警鐘と言えるでしょう。
Influenza-Associated Hospitalizations During a High Severity Season - Influenza Hospitalization Surveillance Network, United States, 2024-25 Influenza Season
高重症度シーズンにおけるインフルエンザ関連入院 - インフルエンザ入院サーベイランスネットワーク、米国、2024-25年インフルエンザシーズン
O'Halloran A, Habeck JW, Gilmer M, et al.
MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2025 Sep 11;74(34):529-537.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40934142/
背景:
2024-25年の米国のインフルエンザシーズンは、インフルエンザA(H1N1)pdm09とA(H3N2)ウイルスの同時流行を特徴とする高重症度のシーズンでした。

研究デザイン:
米国人口の9%をカバーするインフルエンザ入院サーベイランスネットワークのデータを分析し、2024-25年シーズンの検査確定インフルエンザ関連入院率と患者の臨床的特徴を過去のシーズンのデータと比較しました。この分析は、2024年10月1日から2025年4月30日までのインフルエンザ関連入院に関する速報データに基づいています。

結果:
累積インフルエンザ関連入院率(人口10万人あたり127.1人)は、2010-11年シーズン以降のすべてのシーズン終了時率を上回りました。2024-25年シーズンの累積率は75歳以上の人で最も高く(10万人あたり598.8人)なりました。年齢層別に見ると、2024-25年シーズンの入院率は2010-11年シーズン以降の過去の中央値と比較して1.8倍から2.8倍高かったです。入院患者のうち、インフルエンザワクチンを接種していたのは32.4%、抗ウイルス薬治療を受けたのは84.8%でしたが、5〜17歳の小児および青年で抗ウイルス薬投与の割合が最も低く(61.6%)なっていました。過去のシーズンと同様に、2024-25年シーズンに入院した患者のほとんど(89.1%)が1つ以上の基礎疾患を有しており、16.8%が集中治療室に入院、6.1%が侵襲的人工呼吸管理を受け、3.0%が院内死亡しました。

結論:
季節性インフルエンザウイルスは、特に合併症のリスクが高い人々において重篤な疾患を引き起こす可能性があります。CDCは、禁忌のない6ヶ月以上のすべての人に年1回のインフルエンザワクチン接種を推奨し、また、すべてのインフルエンザ入院患者には合併症リスクを低減するために迅速な抗ウイルス薬治療を行うことを推奨しています。