注目論文:英国の医療従事者におけるインフルエンザワクチンの有効性

呼吸器内科
英国の大規模コホート研究(SIREN study)から、2023-24年シーズンの医療従事者におけるインフルエンザワクチンの有効性に関するデータが報告されました。本研究は定期的なPCR検査に基づいた前向きコホートデザインであり、研究デザインの質が高い点が特徴です。結果として、調整後のワクチン有効性は約40%と示されました。
Effectiveness of influenza vaccination against infection in UK healthcare workers during winter 2023-24: the SIREN cohort study
英国の医療従事者における2023-24年冬季のインフルエンザ感染に対するワクチン有効性:SIRENコホート研究
McGeoch LJ, Foulkes S, Whitaker H, Munro K, Khawam J, Sparkes D, Charlett A, Brown CS, Atti A, Islam J, Hopkins S, Andrews N, Hall VJ.
J Infect. 2025 Aug 13:106585.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40816721/
背景:
2023年9月1日から2024年3月31日までの期間において、英国の医療従事者におけるインフルエンザ感染に対するワクチン有効性を明らかにすること。

研究デザイン:
SARS-CoV-2 Immunity & Reinfection Evaluation (SIREN) 研究に登録された病院勤務の医療従事者(HCWs)を対象とした前向きコホート研究を実施した。参加者は2週間ごとのインフルエンザPCR検査とアンケートを完了した。インフルエンザワクチン接種状況は、国の予防接種記録とアンケートから特定した。PCR陽性のインフルエンザに対するワクチン有効性は、年齢層、性別、慢性疾患の有無、患者対応業務、地域で調整したCox回帰分析を用いて推定した。多変量ロジスティック回帰を用いた症例対照研究およびテスト陰性デザイン症例対照(TNCC)研究も実施した。

結果:
参加者4,934名のうち、年齢中央値は55歳(IQR 47-60歳)で、ほとんどが女性(78.7%)、白人(85.6%)であった。全体で3,857名(78.2%)がインフルエンザワクチンを接種し、266名(5.4%)がインフルエンザ陽性となり、そのうち227名(85.3%)が急性呼吸器感染症の症状を報告した。調整後のワクチン有効性は39.9%(95%信頼区間 21.8 - 53.8%)であり、症例対照研究(41.2%, 22.5 - 55.2%)およびTNCC研究(45.9%, 21.8 - 62.2%)でも同様の結果であった。

結論:
インフルエンザワクチンの有効性は40%であり、症候性患者に対する推定値と一致していた。この結果を英国の全医療従事者に適用すると、5万人以上の感染を予防できる可能性がある。これらの知見は、医療従事者の感染を減らし、それによって患者を保護し、労働力の圧迫を軽減するための季節性インフルエンザワクチンの重要性を強調するものである。