重症喘息の増悪予測は臨床上の重要課題ですが、多数の因子が複雑に絡み合います。本研究はベイジアンネットワークという手法を用い、単なるリスク因子の列挙ではなく、それらの「予測経路」を可視化した点が新しいです。特に、慢性副鼻腔炎が血中好酸球、FeNO、FEV₁という直接的な増悪予測因子に影響を与え、将来の増悪につながるという経路を明確に示したことは大きな知見です。マクロライド使用も独立した経路として示唆されました。

背景
増悪の正確なリスク予測は、重症喘息管理において極めて重要です。複数のリスク因子が関与しますが、リスク予測の経路は依然として不明確です。

リサーチクエスチョン
重症喘息患者において、臨床的に関連のある予測因子間の相互作用は、どのようにして重症増悪につながるのか？

研究デザインと方法
重症喘息レジストリ（2017-2021年）から、生物学的製剤未使用の重症喘息患者（n = 6,814、18歳以上）を特定しました。関連する予測因子として、人口統計、肺機能、炎症バイオマーカー、医療利用、薬剤、増悪歴、併存疾患を対象としました。専門家の知識と機械学習アルゴリズムを組み合わせることで、重症増悪の予測プロセスを表すベイジアンネットワークを得ました。内部検証を実施し、提案された影響ダイアグラムは、決定ノードと効用ノードを予測経路に統合しました。

結果
ベイジアンネットワーク分析により、血中好酸球数、呼気中一酸化窒素（FeNO）濃度、およびFEV₁が、過去の増悪と将来の重症増悪との間のリスク移行に直接影響を与えることが明らかになりました。慢性副鼻腔炎の存在は、血中好酸球数、FeNO、FEV₁予測値％に直接影響を与えることで、この移行に間接的に影響しました。マクロライドの使用は、増悪歴に独立して影響を与え、将来の重症喘夕増悪に影響を及ぼしました。モデルの識別能は中程度でしたが、較正度は高かったです。

解釈
本研究は、重症増悪の重要な予測経路を特定しました。これには、現在の重症喘息増悪から将来の増悪へのリスク移行における直接的な予測因子に対する慢性副鼻腔炎の影響が含まれます。マクロライドの使用も、特定されたもう一つの重要な予測経路でした。これらの知見は、重症喘息治療における共同での臨床意思決定を支持するものです。