注目論文:ヒトメタニューモウイルス発見から25年:これまでの知見と今後の課題
呼吸器内科
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)が発見されて約25年、今や小児から高齢者まで幅広い年代で重要な呼吸器病原体と認識されています。特に高齢者やCOPD、心不全、免疫不全などの基礎疾患を持つ成人では重症肺炎をきたしうるため臨床的意義は大きい。生涯にわたる免疫が獲得されにくく再感染を繰り返す点も厄介です。本総説はhMPVに関する知見を整理し、ワクチン開発の基礎となるデータ提供の重要性を説いており、今後の研究の方向性を示す上で必読です。
Review: Knowledge Gained and Gaps in Understanding in the 25 Years Since Human Metapneumovirus Was First Identified as a Cause of Human Disease
総説:ヒトメタニューモウイルスがヒトの疾患原因として初めて同定されて以来25年間の知見と理解のギャップ
Branche AR, Edwards KM.
J Infect Dis. 2025 Jul 16;232(Supplement_1):S1-S9.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40668102
総説:ヒトメタニューモウイルスがヒトの疾患原因として初めて同定されて以来25年間の知見と理解のギャップ
Branche AR, Edwards KM.
J Infect Dis. 2025 Jul 16;232(Supplement_1):S1-S9.
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)はPneumoviridae科に属する一本鎖RNAウイルスで、2001年に初めて同定されました。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と遺伝的に多くの類似点を持ちます。hMPVは世界的に流行しており、5歳までにほぼ全ての小児が感染し、症候性呼吸器感染症全体の2~7%を占めます。しかし、hMPVに対する長期的な免疫は不完全で、生涯を通じて再感染が起こります。加齢とともにhMPVの影響は大きくなり、成人では肺炎を引き起こし、集中治療室への入室や人工呼吸器管理を要する重篤な転帰をたどることがあります。重症化のリスク因子としては、重度の免疫不全(20%)、うっ血性心不全(25%)、重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)(20%)などが挙げられています。本総説が掲載されている特集号では、hMPVの病態、疫学、臨床像に関する研究がまとめられており、これらのデータは将来のhMPVワクチン開発の恩恵を受ける対象者を理解するための基礎となります。