注目論文:重症COVID-19患者に対する免疫調節薬の有効性比較

呼吸器内科
重症COVID-19に対する免疫調節薬の使い分けに関する重要なエビデンスです。これまで有効性が確立されていたトシリズマブに加え、同じIL-6受容体阻害薬であるサリルマブも同等の有効性を持つことが、REMAP-CAPという大規模アダプティブプラットフォーム試験で示されました。一方で、IL-1受容体拮抗薬のアナキンラは有効性が見られませんでした。
Tocilizumab, sarilumab and anakinra in critically ill patients with COVID-19: a randomised, controlled, open-label, adaptive platform trial
重症COVID-19患者におけるトシリズマブ、サリルマブ、アナキンラ:ランダム化比較、非盲検、アダプティブプラットフォーム試験
Derde L, Gordon AC, Mouncey PR, 他
Thorax. 2025 May 13:thorax-2024-222488.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40360262/
背景:
トシリズマブは重症COVID-19患者の転帰を改善することが知られています。他の免疫調節薬が同等またはそれ以上に有効であるかは不明でした。

研究デザイン:
9カ国133施設で進行中のアダプティブプラットフォーム試験において、重症COVID-19患者を対象にトシリズマブ、サリルマブ、アナキンラ、および免疫調節薬なし(対照群)の治療を調査しました。患者は各施設で利用可能な治療法の数に応じて割り付け比率が変動する形でランダムに割り付けられました。主要評価項目は、院内死亡(-1点と割り当て)と生存者の21日目までの臓器補助なし日数を組み合わせた順序尺度としました。本試験では、優越性、劣性、有効性、同等性、または無益性に関する事前定義されたトリガーを持つベイズ統計モデルが用いられました。

結果:
2020年3月25日から2021年4月10日までに登録された2274人の重症患者のうち、972人がトシリズマブ群、485人がサリルマブ群、378人がアナキンラ群、418人が対照群に割り付けられました。臓器補助なし日数の中央値は、トシリズマブ群で7日(IQR -1, 16)、サリルマブ群で9日(IQR -1, 17)、アナキンラ群で0日(IQR -1, 15)、対照群で0日(IQR -1, 15)でした。対照群に対する調整後オッズ比の中央値は、トシリズマブ群で1.46(95%信用区間[CrI] 1.13, 1.87)、サリルマブ群で1.50(95% CrI 1.13, 2.00)、アナキンラ群で0.99(95% CrI 0.74, 1.35)であり、優越性を示す事後確率はそれぞれ99.8%、99.8%、46.6%でした。すべての治療法は安全であると考えられました。

結論:
重症COVID-19患者において、トシリズマブとサリルマブは臓器補助期間の短縮と死亡率の低下において同等の有効性を持っています。アナキンラはこの集団において有効ではありません。