米国からの報告ですが、生産年齢成人（18-64歳）におけるインフルエンザの負荷は決して軽視できません。特に50-64歳や慢性疾患を有する若年層では入院・死亡リスクが高いことが示されています。本研究の興味深い点は、標準的な不活化ワクチン（SD-IIV）の代わりに組換えインフルエンザワクチン（RIV）を使用した場合、シーズンあたり追加で1万人の入院を防げた可能性があるというシミュレーションです。日本では高齢者や小児への接種が主に推奨されますが、社会の根幹をなす生産年齢層、特にハイリスク群へのワクチン戦略として、より効果の高いワクチンを検討する意義を示唆する重要なデータです。

背景：
米国では普遍的なインフルエンザワクチン推奨にもかかわらず、生産年齢成人（18-64歳）のワクチン接種率（VCR）は最適とは言えません。複数の研究で、組換えインフルエンザワクチン（RIV）がこの年齢層において標準用量の不活化インフルエンザワクチン（SD-IIV）よりも優れた防御効果を提供することが示唆されています。我々は、米国の生産年齢人口にRIVを推奨することによる潜在的な追加的利益を探求しました。

研究デザイン：
米国疾病予防管理センター（US-CDC）からインフルエンザの疾病負荷、ワクチン有効性、およびVCRに関するデータ（2012-2023年、ただし2020-2021年を除く）を収集しました。18-64歳成人のインフルエンザ負荷を明らかにするため、過去10年間の後ろ向き分析を実施しました。慢性疾患の有病率を用いて年齢層別分析を行い、インフルエンザによる入院および死亡への影響を評価し、研究期間中にSD-IIVの代わりにRIVが使用されていた場合の入院減少数を、年齢およびリスクグループ別のデシジョンツリーモデルを用いて推定しました。

結果：
過去10年間で、インフルエンザは米国の生産年齢成人において、シーズンあたり中央値で151,021件（95%信頼区間 139,750-164,130）の入院を引き起こしました。50-64歳の成人は、18-49歳の成人と比較して、入院率および死亡率が3〜5倍高かったです。18-49歳群のうち慢性疾患を持つ14%が、このグループの入院および死亡の28%以上を占めていました。もしSD-IIVの代わりにRIVが使用されていた場合、これらの集団でシーズンごとに追加で10,000件の入院が防げた可能性があります。

結論：
インフルエンザは米国の生産年齢成人、特に50-64歳に大きな影響を与えます。平均寿命の延伸と慢性疾患の有病率の増加が予想されるため、健康的な高齢化を支援するためには、対象を絞った公衆衛生上のワクチン推奨が重要です。