注目論文:COPDの現行喫煙者では好酸球数に関わらずICSの効果が減弱する

呼吸器内科
COPD治療において血中好酸球数が吸入ステロイド(ICS)導入の重要なバイオマーカーであることは広く知られていますが、本研究はそこに「喫煙状況」という新たな視点を加えました。有名なFLAME試験の事後解析ですが、現行喫煙者では血中好酸球数に関わらずICSの効果が減弱し、増悪予防においてLABA/LAMAがLABA/ICSを上回るという結果です。一方で、元喫煙者で好酸球数が200/µL以上の場合にはLABA/ICSが優れていました。日常診療でICSの導入を検討する際、好酸球数だけでなく、患者が現在も喫煙しているかどうかが薬剤選択を左右する重要な因子となりそうです。
Reduced treatment response to inhaled corticosteroids in current smokers with COPD, regardless of blood eosinophil count: insights from the FLAME trial
COPDの現行喫煙者における血中好酸球数に関わらない吸入ステロイド薬への治療反応の低下:FLAME試験からの洞察
Mathioudakis AG, Higham A, Bate S, Chatzimavridou-Grigoriadou V, Sivapalan P, Jensen JS, Felton T, Vestbo J, Singh D.
Thorax. 2025 May 11:thorax-2024-222547.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40350264/
背景:
吸入ステロイド(ICS)は、血中好酸球数(BEC)が高い増悪ハイリスクの慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に利益をもたらします。新たなエビデンスは、現行喫煙者ではICSへの反応が低下することを示唆しています。

研究デザイン:
このFLAME試験の事後解析では、増悪予防における長時間作用性β2刺激薬(LABA)とICSの併用療法と、LABAと長時間作用性ムスカリン拮抗薬(LAMA)の併用療法の有効性に対する喫煙状況の影響を調査しました。

結果:
本研究の知見によると、現行喫煙者において中等度から重度の増悪を予防する上では、LABA+LAMAがLABA+ICSよりも優れており、血中好酸球数(BEC)が200 cells/µL以上の元喫煙者においては劣っていました。

結論:
喫煙状況は増悪アウトカムに対するICSの治療効果を著しく修飾し、これは血中好酸球数に関わらず、現行喫煙者においてICSの効果が低下することを示唆しています。