注目論文:日本人成人における市中肺炎起因菌としての肺炎球菌血清型分布(2019-2022年)
呼吸器内科
小児へのPCV(肺炎球菌結合型ワクチン)導入による間接効果で、成人の肺炎球菌性肺炎の起炎血清型は大きく変化しています。本邦の多施設共同研究によるこの最新データは、我々のワクチン選択に直結する重要な情報です。現在本邦で推奨されているPPSV23(23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン)のカバー率が44.1%に留まる一方、新しい結合型ワクチンであるPCV20は43.7%、そして開発中のPCV21は71.9%と高いカバー率を示しました。特に高齢者や介護施設入所者で問題となる血清型3にも対応できる新世代ワクチンの有用性は高く、成人への肺炎球菌ワクチン戦略の再評価が急務であることが明確に示されたと言えます。
Serotype distribution among adults with community-acquired pneumococcal pneumonia in Japan between 2019 and 2022: A multicenter observational study
2019年から2022年の日本における市中肺炎を発症した成人での肺炎球菌血清型分布:多施設共同観察研究
Maeda H, Ito I, Sando E, et al.
Hum Vaccin Immunother. 2025 Dec;21(1):2518847.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40576179/
2019年から2022年の日本における市中肺炎を発症した成人での肺炎球菌血清型分布:多施設共同観察研究
Maeda H, Ito I, Sando E, et al.
Hum Vaccin Immunother. 2025 Dec;21(1):2518847.
背景:
肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)は、成人の市中肺炎(CAP)の主要な原因菌です。小児の定期予防接種プログラムに肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)が導入されたことにより、間接効果(集団免疫)によって成人の肺炎球菌感染症の血清型分布は変化しました。日本では、PCV15とPCV20が導入され、PCV21が成人向けに承認審査中です。
研究デザイン:
この多施設共同観察研究では、2019年5月から2022年12月までに市中肺炎を発症し、培養で肺炎球菌が陽性となった成人患者583名を対象に、肺炎球菌の血清型を評価しました。肺炎球菌分離株はクエルング反応を用いて血清型が同定されました。
結果:
患者の年齢中央値は74歳(四分位範囲:66-82歳)で、383名(65.7%)が男性でした。387名(66.4%)が1つ以上の基礎疾患を有し、425名(72.9%)が入院、305名(52.3%)がCURB-65スコア2点以上でした。最も一般的な血清型は、3型(12.5%)、35B型(12.0%)、15A型(7.7%)、11A型(6.7%)、23A型(6.3%)でした。各ワクチンに含まれる血清型のカバー率は、PCV13が24.0%、PCV15が28.0%、PCV20が43.7%、PPSV23が44.1%、PCV21が71.9%でした。ワクチンでカバーされる血清型の割合は、65歳未満と65歳以上の患者間で同様でした。血清型3は、自宅居住者(11.2%)と比較して介護施設入所者(25.9%)でより多く見られました。
結論:
PCV20およびPCV21でカバーされる血清型の割合が高いことは、これらの新しいワクチンが成人の肺炎球菌性肺炎に対して追加の予防効果を提供する可能性を示唆しています。日本で成人向けに新たに開発されたPCVが利用可能になることを踏まえ、成人に対する最適な肺炎球菌ワクチン接種方針を再評価することが妥当です。
肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)は、成人の市中肺炎(CAP)の主要な原因菌です。小児の定期予防接種プログラムに肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)が導入されたことにより、間接効果(集団免疫)によって成人の肺炎球菌感染症の血清型分布は変化しました。日本では、PCV15とPCV20が導入され、PCV21が成人向けに承認審査中です。
研究デザイン:
この多施設共同観察研究では、2019年5月から2022年12月までに市中肺炎を発症し、培養で肺炎球菌が陽性となった成人患者583名を対象に、肺炎球菌の血清型を評価しました。肺炎球菌分離株はクエルング反応を用いて血清型が同定されました。
結果:
患者の年齢中央値は74歳(四分位範囲:66-82歳)で、383名(65.7%)が男性でした。387名(66.4%)が1つ以上の基礎疾患を有し、425名(72.9%)が入院、305名(52.3%)がCURB-65スコア2点以上でした。最も一般的な血清型は、3型(12.5%)、35B型(12.0%)、15A型(7.7%)、11A型(6.7%)、23A型(6.3%)でした。各ワクチンに含まれる血清型のカバー率は、PCV13が24.0%、PCV15が28.0%、PCV20が43.7%、PPSV23が44.1%、PCV21が71.9%でした。ワクチンでカバーされる血清型の割合は、65歳未満と65歳以上の患者間で同様でした。血清型3は、自宅居住者(11.2%)と比較して介護施設入所者(25.9%)でより多く見られました。
結論:
PCV20およびPCV21でカバーされる血清型の割合が高いことは、これらの新しいワクチンが成人の肺炎球菌性肺炎に対して追加の予防効果を提供する可能性を示唆しています。日本で成人向けに新たに開発されたPCVが利用可能になることを踏まえ、成人に対する最適な肺炎球菌ワクチン接種方針を再評価することが妥当です。