インフルエンザやCOVID-19と同様に、RSV感染症が心血管イベント（CVE）のリスクとなることが示されてきましたが、本研究はそのリスクを具体的に数値で示しました。入院後28日間のCVE発生率比がベースラインの18.5倍に達するという結果は衝撃的です。CVEの44%が既往歴のない患者で発生した点も重要です。高齢者や基礎疾患を有する患者へのRSVワクチン接種の重要性を裏付ける強力なエビデンスであり、臨床現場での患者説明にも活用できるデータだと思います。

背景：
心血管合併症は、インフルエンザおよびSARS-CoV-2感染患者の有害な転帰の一因です。RSV感染と心血管イベント（CVE）との関連は報告されていますが、データは限られています。

研究デザイン：
2017年から2020年の冬季にニューヨーク州ロチェスターでRSVにより入院した患者を対象に、後ろ向き研究を行いました。新規のうっ血性心不全（CHF）、心房細動・粗動（AF）、心筋梗塞（MI）、上室性および心室性不整脈、静脈血栓塞栓症、脳卒中、ならびに既存のCHFおよびAFの増悪など、医学的介入を必要とする広範なCVEを含めました。入院前6ヶ月間、入院後28日間の高リスク期間、および入院後29日から6ヶ月までの遅発リスク期間におけるCVEの累積数を比較しました。

結果：
評価した471人の患者のうち、37%が高リスク期間にCVEを経験し、CHF（25%）、AF（13%）、MI（9%）が最も多くみられました。これらのうち44%は、これらの疾患の既往歴がない患者で発生しました。しかし、65歳以上の年齢、既存の高血圧、CHF、AF、冠動脈疾患、および3つ以上の古典的な心リスク因子の存在は、高リスク期間中のCVEと有意に関連していました。心合併症は、高リスク期間における死亡率の増加と関連していました。入院前と比較したCVEの発生率比は、高リスク期間で18.5、遅発リスク期間で1.6でした。

結論：
RSVによる入院は、特に併存疾患を持つ患者において、新規CVEおよび既存の心血管疾患の増悪リスクの増加と関連していました。この情報は、RSVワクチン接種に関する情報に基づいた意思決定に重要です。