注目論文:ノルウェーにおける妊婦のワクチン接種率の低さと格差

呼吸器内科
妊婦はインフルエンザやCOVID-19のハイリスク群であり、ワクチン接種が強く推奨されます。しかし、公衆衛生制度が充実しているノルウェーですら、接種率が30%前後に留まるという事実は重く受け止めるべきです。特に、移民や低学歴層で著しく低いというデータは、単なる情報提供だけでは不十分で、いかにして脆弱な層へアプローチするかが世界共通の課題であることを示しています。日本でも妊婦への接種率やその背景について、同様の詳細な分析が求められます。
Low and inequitable influenza and COVID-19 vaccination coverage among pregnant women in Norway: Nationwide population-based cohort study
ノルウェーにおける妊婦のインフルエンザおよびCOVID-19ワクチン接種率の低さと不均衡:全国民ベースのコホート研究
Hansen BT, Dahl J, Greve-Isdahl M, et al.
Vaccine. 2025 Jun 14;61:127386.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40517499/
背景:
多くの国が妊娠中のインフルエンザおよびCOVID-19に対するワクチン接種を推奨していますが、接種率のサーベイランスはしばしば欠如しています。我々はノルウェーにおける妊娠中のインフルエンザおよびCOVID-19ワクチン接種の全国的な接種率を定量化し、その社会人口統計学的相関因子を特定することを目的とします。

研究デザイン:
2021年9月1日から2022年12月31日までのノルウェーにおける全妊娠について、出産、ワクチン接種、社会人口統計学的因子に関する全国的な個人レベルのレジストリデータを統合しました。ワクチン接種の唯一の適応が妊娠である女性、すなわち妊娠第2および第3トリメスターにおける母体のインフルエンザおよびCOVID-19ワクチン接種率とその相関因子を推定しました。

結果:
2021/2022年インフルエンザシーズンに妊娠中のインフルエンザワクチン接種対象であった52,833人の女性のうち、27.7%(n=14,646)がインフルエンザワクチンを接種しました。同様に、研究期間中に妊娠中のCOVID-19ワクチン接種対象であった50,108人の女性のうち、31.8%(n=15,951)がCOVID-19ワクチンを接種しました。接種率は、移民の背景を持つ母親、低学歴、低所得、若年、多子、地方在住、および労働力外の者で低くなっていました。最も低い接種率は移民の女性で観察され(インフルエンザ14.5%、COVID-19ワクチン16.0%)、ノルウェー出身の女性と比較した相対リスク(RR)はそれぞれ0.44(95%CI: 0.42-0.46)および0.41(95%CI: 0.39-0.43)でした。最も高い接種率は最高学歴の女性で観察され(インフルエンザ38.2%、COVID-19 43.6%)、最低学歴の女性と比較したRRはそれぞれ2.47(95%CI: 2.33-2.62)および2.36(95%CI: 2.24-2.49)でした。

結論:
母体へのインフルエンザおよびCOVID-19ワクチン接種率は不十分です。加えて、接種には高度で一貫した不均衡が存在します。母体ワクチン接種プログラムのパフォーマンスを適切に評価し改善できるようにするため、タイムリーで包括的なサーベイランスを優先すべきです。