注目論文:AIを活用した呼吸機能評価による間質性肺疾患の診断支援

呼吸器内科
間質性肺疾患(ILD)の初期は呼吸機能検査(PFT)の変化が軽微なため、診断に難渋することが少なくありません。本研究は、AIを用いたPFT解釈支援ソフトウェアが、ILDの診断精度を大幅に向上させることを示した重要な報告です。AIの補助により、主要診断としてのILD検出率が42.8%から72.1%へと劇的に改善した点は注目に値します。さらに興味深いのは、AIを数ヶ月間使用した後には、医師のAIなしでの診断能力も向上したという結果です。これはAIが単なるツールに留まらず、医師への教育的な効果も持ちうることを示唆しています。AIは臨床判断を代替するものではありませんが、PFT解釈の客観性と精度を高め、早期診断に貢献する強力な支援ツールとなる可能性を秘めています。
AI-powered evaluation of lung function for diagnosis of interstitial lung disease
間質性肺疾患の診断のためのAIを活用した呼吸機能評価
Gompelmann D, Gysan MR, Desbordes P, Maes J, Van Orshoven K, et al.
Thorax. 2025 Mar 13:thorax-2024-221537.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40081903/
背景:
間質性肺疾患(ILD)の診断は、発症初期には呼吸機能検査(PFT)への影響が最小限であるため、困難を伴うことがある。早期診断を改善するため、本研究は、ILD診断のためのPFT解釈において、人工知能(AI)ソフトウェアが呼吸器専門医を支援する可能性を探ることを目的とする。このソフトウェアは、PFTの自動記述とAIモデルから計算された疾患確率を提供する。

研究デザイン:
研究フェーズ1では、60名の患者(うち30名がILD)のコホートを対象に、25名の呼吸器専門医(若手医師8名、経験豊富な専門医17名)がPFT(体プレチスモグラフィおよび肺拡散能)と簡単な病歴を評価して後ろ向きに診断を行った。専門家らは、AI(ArtiQ.PFT, V.1.4.0, ArtiQ, BE)ソフトウェアの支援なしとありの2回、コホートをスクリーニングし、各症例について主要診断と最大3つの鑑別診断を提示した。研究フェーズ2では、19名の呼吸器専門医がArtiQ.PFTを4~6ヶ月間使用した後に、同じプロトコルを繰り返した。

結果:
全体として、研究フェーズ1において、AIは様々な肺疾患に対する診断精度を41.8%から62.3%に向上させた。ILDに焦点を当てると、AIは主要診断としての肺線維症の検出を、AIなしの42.8%からAIありの72.1%に改善した(p<0.0001)。フェーズ2でも同様の結果が得られた:AIの使用により、主要診断に基づくILDの診断率は53.2%から75.1%に増加した(p<0.0001)。AI支援なしでのILD検出率はフェーズ1とフェーズ2の間で有意に増加したが(p=0.028)、AI支援ありでは増加しなかった(p=0.24)。

解釈:
本研究は、PFT解釈に関するAIベースの意思決定支援が、正確かつ早期のILD診断を改善することを示している。