注目論文:COVID-19後遺症はインフルエンザの約2倍、ハイブリッド免疫がリスクを低減

呼吸器内科
COVID-19の遷延性症状(後遺症)は、臨床現場で引き続き大きな課題です。この米国の家庭内伝播研究は、後遺症リスクをインフルエンザと比較した貴重なデータを提供しています。感染が確認された人において、COVID-19罹患後の後遺症リスクはインフルエンザの約2倍高いという結果は、COVID-19の疾患としての影響の大きさを示す明確なエビデンスです。さらに、基礎疾患が後遺症のリスクを高める一方、ワクチン接種と感染歴を併せ持つ「ハイブリッド免疫」がリスクを半分以下に低減させるという知見は、ワクチン接種の重要性を改めて裏付けるものです。患者さんへの説明にも有用な情報であり、今後の感染対策を考える上で重要な示唆を与えてくれます。
Ongoing Symptoms After Acute SARS-CoV-2 or Influenza Infection in a Case-Ascertained Household Transmission Study: 7 US Sites, 2021-2023.
急性SARS-CoV-2またはインフルエンザ感染後の遷延性症状:症例確認された家庭内伝播研究、米国7施設、2021-2023年
Bullock A, Dalton AF, Stockwell MS, McLaren SH, Sano E, Nguyen HQ, Rao S, Asturias E, Lutrick K, Ellingson KD, Maldonado Y, Mellis AM, Smith-Jeffcoat SE, Grijalva CG, Talbot HK, Rolfes MAR, Biddle JE, Zhu Y, Ledezma K, Pryor K, Valdez de Romero A, Vargas C, Petrie JG, Floris-Moore M, Bowman N.
Clin Infect Dis. 2025 Jun 4;80(5):1032-1044.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40036243/
背景:
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2 [SCV2])またはインフルエンザ感染後の遷延性症状の有病率とリスク因子は、十分に解明されていない。我々は、SCV2またはインフルエンザに1人以上が感染した世帯を対象とした前向きコホート研究を実施し、90日時点での遷延性症状の有病率と関連因子を評価した。

研究デザイン:
発端者とその世帯内接触者は、ベースラインの健康情報と社会人口統計学的情報を提供し、登録後10日間、毎日呼吸器検体を採取した。参加者は登録から90日後に追跡調査を完了し、遷延性症状を評価した。

結果:
2021年12月から2023年5月に登録された1967人の参加者を分析した。遷延性症状のリスクは、SCV2世帯(SCV2陽性者: 15.6%; SCV2陰性者: 13.9%; オッズ比[OR]: 1.14; 95%信頼区間[CI]: 0.7-1.69)またはインフルエンザ世帯(インフルエンザ陽性者: 8.8%; インフルエンザ陰性者: 10.0%; OR: 0.87; 95% CI: 0.45-1.72)において、感染状況による差はなかった。しかし、感染が確認された研究参加者の中では、SCV2陽性参加者はインフルエンザ陽性参加者に比べて遷延性症状を有するオッズが約2倍高かった(OR: 1.92; 95% CI: 1.27-2.97)。

結論:
これらの結果は、SCV2世帯がインフルエンザ世帯と比較して遷延性症状の有病率が有意に高いことを示唆している(OR: 1.78; 95% CI: 1.28-2.47)。SCV2感染者の中では、基礎疾患(調整後OR[aOR]: 2.65; 95% CI: 1.80-3.90)および急性感染期のコロナウイルス感染症2019(COVID-19)様症状(aOR: 2.92; 95% CI: 1.15-7.43)が90日時点での遷延性症状のオッズを増加させた一方、ハイブリッド免疫は遷延性症状のオッズを減少させた(aOR: 0.44; 95% CI: 0.22-0.90)。