注目論文:重症喘息における生物学的製剤治療:経口ステロイド関連有害事象の新規発症リスク低減効果

呼吸器内科
重症喘息治療における生物学的製剤の経口ステロイド(OCS)減量効果は確立されていますが、OCS関連の有害事象減少に繋がるかは明確ではありませんでした。本研究は、国際的な大規模データベースを用い、生物学的製剤開始群と非開始群でOCS関連有害事象の新規発症リスクを比較しました。結果、生物学的製剤開始群では有害事象全体のリスクに加え、特に糖尿病、主要心血管イベント、不安・抑うつの新規発症が有意に低下しました。生物学的製剤が喘息コントロール改善のみならず、OCS長期使用に伴う全身性合併症予防にも貢献しうる可能性を示唆する重要な報告です。
Prevention of Cardiovascular and Other Systemic Adverse Outcomes in Patients with Asthma Treated with Biologics
生物学的製剤による治療を受けた喘息患者における心血管系およびその他の全身性有害アウトカムの予防
Sadatsafavi M, Price DB, 他.
Am J Respir Crit Care Med. 2025 May 18. Epub ahead of print.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40383109/
背景:
臨床試験では重症喘息患者における生物学的製剤の経口コルチコステロイド(OCS)減量効果が示されているが、これがOCS関連の新規有害事象の減少につながるかどうかについてはほとんど知られていない。

目的:
生物学的製剤開始群と非開始群の間で、OCS関連の新規有害事象の発現リスクを比較すること。

研究デザイン:
国際重症喘息レジストリ(ISAR;16カ国)およびOptimum Patient Care Research database(OPCRD;英国)からのプールデータを用いた縦断的コホート研究である。生物学的製剤開始群では、指標日を生物学的製剤の開始日とした。非開始群では、登録日(ISARの場合)または無作為の診療予約日(OPCRDの場合)とした。群間の比較可能性を向上させるために逆確率治療重み付け(Inverse-probability-of-treatment-weighting: IPTW)を用い、指標日から最大5年間のOCS関連有害事象の発現ハザード比(HR)を推定するために重み付けCox比例ハザードモデルを使用した。

結果:
42,908例の患者が含まれた。全体として、生物学的製剤開始群の27.3%、非開始群の4.7%が長期OCS使用者(指標日前1年間に連続90日以上の連日投与)であり、プレドニゾロン換算の1日平均投与量はそれぞれ10.2mgおよび6.2mgであった。非開始群と比較して、生物学的製剤開始群では、いずれかのOCS関連有害事象の発現率が低下しており(HR [95%信頼区間(CI)]: 0.82 [0.72-0.93]; p=0.002)、これは主に糖尿病(0.62 [0.45-0.87]; p=0.006])、主要心血管イベント(0.65 [0.44-0.97]; p=0.034)、および不安・抑うつ(0.68 [0.55-0.85]; p=0.001])の発現率低下によるものであった。新規発症の白内障(HR: 0.77 [95% CI: 0.47-1.25])、睡眠時無呼吸(HR: 0.82 [95% CI: 0.78-1.41])、または評価された他のOCS関連有害事象(例:骨粗鬆症)の発現率には有意差はなかった。この結果は両データセットで一貫していた。

結論:
我々の結果は、重症喘息患者におけるOCS関連の新規有害事象予防における生物学的製剤の役割を強調するものである。