PRISm（FEV1/FVC≧0.7かつFEV1<80%という肺機能パターン）は、COPDや拘束性肺疾患の診断基準に合致しない「診断の狭間」にある状態で、その臨床的意義は十分に検討されていませんでした。本スコーピングレビューにより、PRISmは加齢、女性、低学歴、喫煙、肥満などの病因的因子だけでなく、喘息、糖尿病、心血管疾患などの併存症との強い関連が明らかとなりました。さらに重要なのは、PRISmの肺機能状態が不安定であり、正常群に比べて気流閉塞（AFO）への進行リスクが高いことです。PRISmは単一の病態ではなく、複数のサブグループに分類され、それぞれ異なる予後を示します。臨床的には、この「見過ごされがちな」肺機能異常に注目し、個別のリスク評価と早期介入を検討する必要があります。

Associated Factors and Pulmonary Function Outcomes of Preserved Ratio Impaired Spirometry: A Scoping Review
Preserved Ratio Impaired Spirometry（PRISm）の関連因子と肺機能転帰：スコーピングレビュー
Xu H, Jiang X, Zeng Q, Li R.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2025 Mar 24;20:767-784.

背景：
Preserved Ratio Impaired Spirometry（PRISm）は、一般的ではあるが十分に研究されていない異常な肺機能状態であり、健康アウトカムの悪化と強く関連しています。しかし、PRISmに関連する因子と肺機能転帰を定義する上で統一性が欠けています。

研究デザイン：
本スコーピングレビューは、ArkseyCとO'Malleyが開発した5ステップのフレームワークに従っています。PRISmに関する文献をPubMed、Embase、CINAHL、Cochrane Library、Web of Science、CNKI、Wan Fangなどのデータベースから、開始から2024年7月までの期間で系統的に検索しました。適切な包含基準と除外基準を適用して関連研究を選択し、データを抽出、収集、要約、報告しました。

結果：
合計38の研究が含まれました。分析により、PRISmの関連因子は病因的因子（高齢、女性、低学歴、喫煙、肥満など）、併存疾患関連（喘息、糖尿病、心血管疾患など）、疾患特性因子（疾患負担、身体能力、放射線学的特徴など）を包含することが明らかになりました。PRISm集団の肺機能状態は不安定であり、正常集団に比べて気流閉塞（AFO）へ進行する可能性が高いことが示されました。PRISmには複数のサブグループ（新規または安定したPRISm、明確なPRISmまたはAFOを伴うPRISm、非拘束性または拘束性PRISmなど）が存在し、異なるサブグループ間で肺機能転帰に顕著な差異が認められました。

結論：
本スコーピングレビューはPRISmのより包括的な理解を提供しています。今後の研究では、PRISmの肺機能のより深い調査、その病態生理学的特性の解明、およびその予防と治療のための新しい戦略の提案に焦点を当てることが推奨されます。さらに、PRISmを包括的に理解するために、低所得国および中所得国においてもさらなる研究が必要です。