若手の時は「人的資本」(=スキル、知識、経験)を築くことに集中する
私が尊敬する著作家、パブリックスピーカーの 山口周さんが、「人生の経営戦略-自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20」(山口周 著、ダイヤモンド社)というキャリア形成に関する素晴らしい本を最近出版されました。
これからの時代のキャリア形成に関する本質をついた素晴らしい書籍であり、私が「全ての日本人に読んで欲しい」と感じる書籍です。
ベストセラーになっているのも納得行く内容で、キャリア形成において、これまでの書籍には不足していた重要な視点が多くちりばめられています。
今回は、現在「旬」ともいえるこの書籍に書かれた概念を、本書から引用して、紹介していきたいと思います
「人生の形成戦略」では、まず最初に「人生」というプロジェクトにおける長期目標を次のように設定しています。
「時間資本を適切に配分することで、持続的なウェルビーイングの状態を築き上げ、いつ余命宣告をされても「自分らしい、いい人生だった」と思えるような人生を送る」
そして、時間資本(=自分の時間)を分配して、次の3つの資本を築き上げていくのが人生というプロジェクトの原理であることを示しています。
「人的資本」(スキル、知識、経験)
「社会資本」(信用・評判、ネットワーク、友人・家族関係)
「金融資本」(現金、株式、債券・不動産)
そして、基本的に人的資本(スキル、知識、経験)を築くことで、社会資本が得られる。次に社会資本(信用・評判など)を築くことで、金融資本が得られると述べています。
そして、これら3つの資本が、人のウェルビーング(=幸福)をもたらすと述べています。
「人的資本」→「社会資本」→「金融資本」
人的資本 → 自己効力感
社会資本 → 社会的なつながり
金融資本 → 経済的安定性
*上記3つの資本の総和がウェルビーング(=幸福)をもたらす
よって、人的資本を築くことが、社会資本を生み、金融資本を増幅させるため、若手の頃は、まず「人的資本」(スキル、知識、経験)を築くことが重要なのです。
例えば、人的資本がない状態で、「人脈を広げる」と言って異業種交流会に行っても意義は乏しいです。
また「手っ取り早く楽に稼げる」というような仕事をいくらしても、人的資本の蓄積は進まないのです。
書籍「人生の経営戦略」では、時間資本を、良い学びが得られる「スジの良い学習」や、良い経験が得られる「スジの良い仕事」に注ぐことで、知識・経験・スキルといった人的資本に転換できると述べています。
研修医の先生や専攻医の先生が、良い研修病院や良い診療科で仕事をすることは、まさに「スジの良い仕事や学習」をする機会を得るためということになります。
私が働く亀田総合病院呼吸器内科でも、専攻医の先生たちに「最大限に筋の良い学習と経験を与え、研修期間に人的資本を多く蓄積してもらうこと」を目標にしています。
私自身は、医師になって長期に休むことなく、約20年間ずっと臨床、教育、研究を続けてきました。
現在亀田総合病院呼吸器内科は約20人の医師が在籍していますが、私が若手の頃は医師も7-8人くらいで、後期研修医4-5名程度で様々な業務を行っており、大変忙しい時期を過ごしていました。
最初に亀田総合病院に来たときは、あまりに周囲の医師のレベルが高く、自分との実力の差に愕然としたことを覚えています。でも、良き同期に恵まれたおかげで、何とか1年間をがむしゃらに過ごしているうちに、病院にも慣れることができました。
とても忙しかったですが、私は、当時の呼吸器内科後期研修医としては、全国的にみても、短期間でかなりの症例数を経験することができたと感じています。
また医師4年目のころは「研究なんて自分にとっては遠い存在だ。きっと取り組むのは無理だろう、、」と思っていましたが、同僚たちが優秀でモチベーションが高く、どんどん学会発表や論文を書いているのに刺激を受けました。
「同期の仲間たちができるのなら、自分でも、できるかもしれない」と感じ、自然と発表や論文執筆に取り組むようになって、アウトプットを続けてきました。
亀田総合病院では、上司や他科の先輩医師からも臨床研究の手ほどきを受ける機会も多かったです。
多くの症例数、恵まれた指導環境、良き同僚たちのおかげで、今思えば、若い時期に「スジの良い学習と経験」を積むことができたのだと思っています。
これにより、時間資本を、人的資本(知識・経験・スキル)に転換していくことができたのだと感じます。
~臨床医のためのライフハック~
若手の時は「人的資本」(=スキル、知識、経験)を築くことに集中しよう。人的資本が、社会資本(信用・評判)、金融資本を増やし、やがては自分の幸福にもつながる。