注目論文:間質性肺疾患急性増悪に対するステロイド療法の系統的レビュー

呼吸器内科
間質性肺疾患(ILD)の急性増悪は予後不良な病態ですが、特発性肺線維症(IPF)以外のILDでは、高用量ステロイド療法が生存率の改善に寄与する可能性が示されました。高用量ステロイド投与後の早期漸減は入院死亡率の低下と関連し、30日間の累積投与量が多いと再発率が低下することも判明しました。IPFでは高用量ステロイド療法の有効性は一定せず、むしろ死亡リスクが増加する可能性も示唆されています。この知見は、ILDの病型に応じた個別化治療の重要性を示唆するものと考えられます。
Corticosteroid therapy for treating acute exacerbation of interstitial lung diseases: a systematic review
間質性肺疾患急性増悪に対するステロイド療法の系統的レビュー
Srivali N, De Giacomi F, Moua T, Ryu JH.
Thorax. 2025 Feb 17;80(3):140-149.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39721758/
背景:
間質性肺疾患(ILD)の急性増悪は死亡率が高く、臨床管理において重要な課題となっています。ステロイド療法は一般的に使用されていますが、最適な投与方法や臨床的有効性は不明確です。本研究では、ILD急性増悪患者における臨床転帰に対するステロイド療法の影響を評価するため、系統的レビューを実施しました。

研究デザイン:
PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従い、複数のデータベースを体系的に検索し、12,454件の論文を特定しました。重複を除外し、タイトルと要約をスクリーニングした後、447件の論文を全文レビュー対象としました。最終的に、ILD急性増悪の治療において高用量ステロイドと低用量または非ステロイド療法を比較した9件の研究が選択基準を満たしました。主要評価項目は院内死亡率、長期死亡率、および急性増悪の再発でした。

結果:
9つの研究(合計18,509例)の分析により、ILDの病型によって治療効果が異なることが明らかになりました。非IPF性ILDでは、高用量ステロイド療法(プレドニゾロン換算>1.0 mg/kg)により生存率が改善し(調整ハザード比0.221、95%信頼区間0.102-0.480、p<0.001)、90日死亡率が低下しました。高用量ステロイドの早期漸減(2週間以内に10%以上の減量)により院内死亡率が低下し(調整ハザード比0.37、95%信頼区間0.14-0.99)、最初の30日間の累積投与量が多いと(5,185±2,414 mg/月 vs 3,133±1,990 mg/月)再発率が低下しました(調整ハザード比0.61、95%信頼区間0.41-0.90、p=0.02)。一方、IPF患者では高用量療法の有効性は一定せず、死亡リスクの増加を報告する研究もありました(オッズ比1.075、95%信頼区間1.044-1.107、p<0.001)。本レビューは、ILD急性増悪に対する個別化治療アプローチの潜在的な利点を強調していますが、明確な推奨事項を示すには慎重な判断が必要です。高用量ステロイド療法は特に非IPF症例で有望な結果を示していますが、現在のエビデンスは一定せず、確固たる結論を導くには強固な支持文献が不足しています。ILD急性増悪の治療戦略を改善し最適化するためには、さらなるランダム化比較試験による研究が必要です。