注目論文:デュピルマブの2型喘息患者における呼気NO・粘液栓・気道イメージングへの効果

呼吸器内科
本研究は、様々な画像技術を用いてデュピルマブの治療効果を客観的に評価しており、臨床的な改善と共に気道の構造的・機能的な改善が得られることを示しています。特に、呼気NO値の改善と気道容積の増加が認められた点は、実臨床での治療効果判定にも応用できる可能性があります。
Effect of dupilumab on exhaled nitric oxide, mucus plugs, and functional respiratory imaging in patients with type 2 asthma (VESTIGE): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 4 trial
2型喘息患者における呼気NO・粘液栓・機能的呼吸イメージングに対するデュピルマブの効果(VESTIGE試験):ランダム化二重盲検プラセボ対照第4相試験
Castro M, et al.
Lancet Respir Med. 2024
https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(24)00362-X/abstract
背景:
喘息は慢性気道炎症と粘液過分泌を特徴とする呼吸器疾患です。VESTIGE試験では、機能的呼吸イメージングを用いて、デュピルマブによる気道構造と機能の変化(粘液栓を含む)を評価しました。

研究デザイン:
VESTIGE試験は14カ国72施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照第4相試験です。中等量から高用量の吸入ステロイド薬と他のコントローラー薬で治療中の、コントロール不良の中等症から重症の2型喘息(血中好酸球数≥300/μLおよび呼気NO≥25ppb)を有する成人患者(18-70歳)を対象としました。患者は2:1の割合でデュピルマブ300mg隔週皮下注射群またはプラセボ群に無作為に割り付けられました。

結果:
2020年7月から2023年1月にかけて患者が登録され、平均年齢50.4歳の患者109名(女性68名、男性41名)が、デュピルマブ群72名、プラセボ群37名に割り付けられました。
24週時点で、デュピルマブ群の患者の方がプラセボ群と比較して呼気NO濃度が25ppb未満になる可能性が有意に高く(57% vs 11%、オッズ比9.8、95%信頼区間3.1-30.8、p<0.001)、全肺気量位での気道容積も改善傾向を示しました(ベースラインからの変化率:デュピルマブ群19.7% vs プラセボ群-2.0%、群間差21.8%、95%信頼区間-7.7-51.3、p=0.14)。
安全性に関しては、治療に関連する有害事象はデュピルマブ群で15%(72名中11名)、プラセボ群で11%(37名中4名)に認められ、既知の安全性プロファイルと一致していました。介入期間中の死亡例はありませんでした。
本研究の結果から、デュピルマブは気道炎症と粘液栓を改善し、気道容積と気流を改善することが示されました。これらの変化は肺機能と喘息コントロールの改善と相関していました。また本研究は、画像技術が疾患負荷の評価、進行のモニタリング、治療反応性の評価に有用であることを示しており、コントロール不良の中等症から重症の2型喘息患者の臨床的意思決定に有益な情報を提供する可能性があります。