研修医の先生は，日々の業務や勉強に取り組む中で、自分に何かが足りない、まだまだできないことが多いと感じることがあるかもしれません。特に、周囲の同僚が順調に進んでいるように見えると、自分だけが遅れているように感じることもあるでしょう。しかし、そんな時こそ、焦らずに、自分を信じて継続してみてください。研修期間中、誰もが経験するであろう現象、それが「ブレークスルー」です。

ブレークスルーとは、それまでできなかったことが、突然できるようになる瞬間を指します。例えば、これまでずっと上手くいかなかった診断や手技が、ある日突然、スムーズにできるようになったり、患者さんとのコミュニケーションがより円滑になったりする瞬間が訪れるのです。これは、知識や技術が一度に身につくというよりも、これまでの努力がある時点で実を結び、自然に自分の中に定着するという感覚です。まさに、積み重ねてきた学びや経験が、ある瞬間で「カチッ」とはまるような感じと言えるでしょう。

しかし、ブレークスルーがいつ起こるかは人それぞれです。ある人は早い段階でその瞬間を迎えるかもしれませんし、他の人は時間がかかることもあります。これは、能力の優劣とは関係がありません。医療の世界は、非常に多様であり、それぞれの分野やスキルには個人の得意不得意があるため、成長の速度も異なります。だからこそ、周囲と自分を比較することに意味はありません。それよりも、自分自身のペースで進み続けることが大切です。

さらに、ブレークスルーは一度きりではなく、医師としてのキャリア全体を通じて何度も訪れるものです。研修期間中に感じる最初のブレークスルーが、例えば基本的な診断スキルや手技の習得に関するものであるなら、その後のキャリアではさらに複雑な症例の処理や、指導医としてのスキルが次のブレークスルーの対象となるかもしれません。医師としての成長は生涯にわたって続き、そのたびに新たな挑戦と学びの機会が訪れます。

重要なのは、日々の努力が無駄になることはないということです。たとえ今は成果が見えなくても、少しずつ積み上げている知識や経験は、確実にあなたの中に蓄積されています。そして、それがある日、ブレークスルーという形で一気に表に現れるのです。その時には、自分でも驚くほどスムーズに仕事が進むようになる瞬間がやってきます。

私も初期研修医から後期研修医の時期まで，なかなか臨床能力が向上せず悩む時が多かったです．でも，ふとした瞬間に「今までできなかったことが、いつの間にかできるようになっている」と気づくことが定期的にありました。そしてその度に、努力を続けることの大切さを実感しました。ですから、今は何かがうまくいかなくても、自分を信じて続けてください。その先に必ず、成長の実感が待っています。

研修医の先生方は、どうか焦らず、自分のペースで進んでください。ブレークスルーは必ず訪れます。その時まで、努力を怠らず、日々の学びを続けていってください。