スポーツ医学とは25- 水泳のスポーツ障害について

今年の夏は猛暑だったのでプールや海に行かれた方も多いことと思います。また近年では健康維持のために年間を通して水泳をされる方も多いでしょう。そこで今回は水泳に多いスポーツ障害についてお話しいたします。
水泳と一言でいっても様々な競技があります。水球、飛び込みなども実は水泳競技に含まれています。しかし、我々が一般的に水泳といった場合にイメージすることが多いのが競泳ですので、ここでは競泳に伴ったスポーツ障害についてお話させていただきます。

競泳のスタイルとしてはバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロールがあります。その中で、成長期のバタフライや平泳ぎの選手に多いのが腰椎分離症、年齢問わずバタフライやクロールの選手に多いのがswimmers's houlder(水泳肩)、さらに平泳ぎに特徴的なのがbreaststrokers' knee(平泳ぎ膝)です。ここではそれぞれについて簡単に説明いたします。

まず腰椎分離症ですが、繰り返し腰を反ったりねじったりすることで発症します。背骨と背骨の間の関節である椎間関節で骨が疲労骨折することで疼痛が発生するとされています。バタフライや平泳ぎで息継ぎの際に胸椎や股関節の柔軟性が乏しく、全身を利用できないとこういった反る動作が強くなるので発生しやすいです。

水泳肩は肩関節において腱板という関節を取り巻く筋肉、もしくは腱板の上にある肩峰下滑液包という袋が炎症を起こすことで発生すると言われています。肩甲骨の動きが悪かったり、肩甲骨を肋骨にぴたっと引き寄せる筋力が弱いと起こります。なぜかというと肩甲骨がこの腱板や肩峰下滑液包の上で天井の役目を果たしており、動きが悪いと天井が高くならなければいけない時にも低く傾いたままとなってしまうので、その下を腱板や肩峰下滑液包が通過し、こすれるからです。特にバタフライやクロールで水をかく動作で肘が高く上がった際にこすれやすいです。

平泳ぎ膝は平泳ぎにおいて水をすばやく蹴って推進力を得る際に膝が外反(X脚のような外側にねじれた形)傾向になることで膝の内側にある靱帯が引きのばされて発生します。脚を閉じることで推進力を得ようとした際に、股関節の柔軟性が落ちているために膝に無理な力がかかったり、膝の内側を補強しているハムストリングスという筋力が弱いために水からの抵抗に膝の靱帯が負けてしまい発生するともいわれています。

以上のように水泳では競技特性によって特徴的な障害が数多く発生いたします。当科では水泳選手を多く治療しており、これまでも水泳のスポーツ障害予防に力を入れてまいりました。水泳をされる方で体の痛みのためによいタイムがなかなか出ない方など是非外来を受診して頂き、医師に相談してみてください。

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スポーツ医学科 大内洋

このサイトの監修者

亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋

【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法