ちょっとためになる話20:頚椎症性脊髄症1

「脊椎変性疾患ってどんな病気か覚えていますか?」
-はい、背骨や椎間板や靱帯が神経を傷めちゃう病気です!
 その通り、よく覚えていますね。背骨の重要な働きの一つに「神経の保護」がありましたね。脊椎とその周辺組織(椎間板や靱帯)が傷んでくると、本来護っているはずの神経を逆に圧迫したり損傷したりするようになります。これを「脊椎変性疾患」と呼んでいます。腰椎変性疾患の代表は「腰部脊柱管狭窄症」でしたが、今回お話しする「頚椎症性脊髄症」は頚椎変性疾患の代表格です。

頚椎症性脊髄症の症状

post47.jpg 外来に現れるなりいきなり、「手がしびれてオイネー」とTさん。今年70歳になるが、現役で稲作農家をしている。稲刈りが終わるまではと我慢していたのだという。
Tさんのお話をまとめると、「5年前から右手のしびれを自覚、その後しびれの範囲は徐々に拡がり、2年前から左手、両足もしびれるようになった。最近は箸が使いにくく、字が下手になった。階段を下りるのが怖くなり、転びやすくなった。トイレが近くなり、残尿感がある。」という経過でした。MRIでは第3〜6頚椎(C3〜6)が変形して脊髄を圧迫していました。

 頚椎症性脊髄症は高齢者(70歳以上)に多い病気です。手足がしびれてきたり、動きが悪くなったりします。上肢症状としては「箸が使いにくい、ボタンがかけにくい」など、細かな作業が難しくなるのが特徴です(巧緻運動障害)。症状が進行すると歩行障害も起こってきます。頚椎症性脊髄症では足が突っ張った感じの歩き方になるため(痙性歩行)、最初に階段の上り下りが困難になってきます。また頻尿・尿漏れ・残尿感など排尿障害が起こることもあります(神経因性膀胱)。多くの場合症状はゆっくり進行しますが、転倒などにより急激に悪化することがあるので注意が必要です。

このサイトの監修者

亀田総合病院
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫

【専門分野】
脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患の外科治療