ちょっとためになる話8:腰部脊柱管狭窄症1

 「オラア、漁をしてるときゃ何でもねーだよ。でもヨー、陸(おか)に上がるとからっきしだめだ。」

 ベテラン漁師のSさん、日に焼けてたくましい体をしている。少し腰をかがめるようにして診察に入ってきた。漁をしているときは全く症状が無いのに、船をおりると足がしびれて50mも歩けないのだという。

 以前お話した"背骨の構造"を思い出してください。「体を支える(支持)」「体を動かす(運動)」そして「神経の保護」―この3つが背骨の大切な役割ですとお話ししました。ところが、脊椎とその周辺組織(椎間板や靱帯)が傷んでくると、本来、護(まも)っているはずの神経を逆に圧迫したり損傷したりするようになります。これを「脊椎変性疾患」とよんでいます。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、「椎間板ヘルニア」「頚椎症性脊髄症」「後縦靱帯骨化症」「黄色靱帯骨化症」「腰椎すべり症」などみんなこの脊椎変性疾患に分類されています。現在まで2000例を超える脊椎手術を行ってきましたが、このうち6割、約1200例が変性疾患に対する手術でした。「腰部脊柱管狭窄症」はその代表的疾患の一つです。次回はより詳しい説明を行っていきます!

このサイトの監修者

亀田総合病院
脊椎脊髄外科部長 久保田 基夫

【専門分野】
脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患の外科治療