microbiology round

今週のmicrobiology roundを報告します。テーマは、Streptococcus gallolyticus subsp. pasteurianusです。

【菌の特徴】
 レンサ球菌は歴史的に Lancefield による血清型分類、溶血性に基づく(α,β,γ 溶血)分類、由来 による(oral streptococci など)分類が平行して存在し、生化学的な分類を加味した再編が繰り返されてきた。このため、レンサ球菌の同定は難しく、非常に混沌としていた。
 微生物分類に遺伝子解析が一 般的に用いられるようになり、特に 16S rRNA gene のデータベースが充実してから、レンサ球菌の分類 はかなり整理された。Lactococcus、Enterococcus、Gemella、Abiotrophia、Granulicatella は新しい属として レンサ球菌属から独立し、残ったレンサ球菌は 16S rRNA gene 配列により、salivarius、mitis、mutans、anginosus、pyogenic、bovis の各グループと、いくつかのマイナーな菌種に分けられた。
 S.bovisは、Lancefield分類でD抗原を持つが、6.5%NaCl存在下で発育しない、いわゆる"non-enteric group D streptococci"と呼ばれていた菌群で、 Enterococcus属に移籍されなかった菌種から構成されている。生化学的性状によって以前からいくつかの biotypeに分類されていたが、近年さらに分類が進んでいる(詳細は、参考文献をご参照ください)。
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S. bovis biotype ?→S. gallolyticus subsp. gallolyticus
S. bovis biotype ?/2→S. gallolyticus subsp. pasteurianus
S. bovis biotype ?/1→S. infantarius subsp. infantarius, S infantarius subsp. coli
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 S.bovis/S.gallolyticusグループはヒト、反芻動物腸管内の常在菌で、健常ヒト腸管の保有率は2.5-15%と報告されている。髄膜炎、感染性心内膜炎、大腸癌、胆嚢癌などの病態と密接な関係があるとされ、これらは亜種により差があるため、正確な亜種名の決定が重要となる。
 歴史的には1951年にMcCoyらがレンサ球菌による感染性心内膜炎, または菌血症と大腸癌の合併を報告した後,1974年にHoppesらが14例のS.bovisによる感染性心内膜炎の9例に大腸癌を合併するとの報告で再び注目を集め、現在までに数多くの報告がなされてきた。
 S.bovis/S.gallolyticusグループは感染性心内膜炎の5〜12%を占めるとされている。また、同グループによる心内膜炎の患者の15〜62%で大腸癌が合併していたとの報告がある。特にS.bovis biotype ?とされていたS.gallolyticus subsp. gallolyticusが感染性心内膜炎や大腸癌と関連するリスクが有意に高いことが判明した。S.gallolyticusは大腸癌の組織に定着しやすく、癌で新生された血管にも結合できるので、血中に侵入する機会が多くなり、菌血症の頻度が増加するため、感染性心内膜炎や髄膜炎へと進展する可能性が高くなるのではないかと推察されている。biotypeIIのS.infantariusとS.pasteurianusについては、消化管腫瘍との関連は不明確である。大腸癌と関連ありという報告もあるが、頻度は一般人口と変わらな い程度かもしれない。一方、胆道疾患と関連性が高いとの報告がある。また、S. pasturianusは、近年新生児および乳児の菌血症、髄膜炎の報告が増えている。

【微生物学的性状】

  • グラム染色:グラム陽性連鎖状球菌。通常長いレンサ状に配列する。真円ではなく、やや潰れた楕円状
  • 溶血性:α溶血、または非溶血(γ型)
  • カタラーゼ試験:陰性
  • 血液寒天培地、チョコレート寒天培地に発育。BTB寒天培地にも翌日小さな集落を形成.
  • Lancefield分類:D群で、yrrolidonyl arylamidase(PYR)試験 陽性ならEnterococcus属。陰性ならS.bovis/S.gallolyticusグループ。
  • MALDI/TOFMSでは亜種の同定まではできない。
  • 亜種の分類のためには培養時の生化学的性状に加え,時には遺伝子解析の併用も要する。

【治療】
ペニシリンが第一選択。セフトリアキソンも使用できる。アレルギーの際はバンコマイシン。
テトラサイクリン、マクロライド、クリンダマイシンは、25−50%は耐性。
ST合剤は75%以上耐性

(参考文献)

1) Up To date: Clinical manifestations, diagnosis, and treatment of infections due to group D streptococci
2)Mandell 8th edition
3)『いま知りたい臨床微生物検査実践ガイド』医歯薬出版株式会社
4)臨床微生物検査ハンドブック第5版

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このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育