ワクチン接種間隔とHPVワクチン

ワクチン接種間隔と、HPVワクチンに関して、情報提供です。

(1)ワクチン接種間隔について

報道によると、2020年1月27日の第37回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会において、生ワクチン同士以外のワクチンの接種間隔規定が撤廃されることになりました。今までは、異なるワクチンの接種間隔は、生ワクチン接種後が27日以上、不活化ワクチン接種後が6日以上空けるように定められていました(ワクチンによる副反応が起きるかもしれない時期を外すため、また生ワクチン同士の接種においては、ウイルス同士の干渉を防止するため)。

今後、2020年10月1日以降は、「注射生ワクチン同士の接種間隔を27日以上あける」以外は、他のワクチンと干渉する可能性は低いことから、ワクチンの接種間隔規定は撤廃されることになります。なお、2020年10月1日から定期接種化が予定されているロタウイルスワクチンは、経口生ワクチンですが、その他のワクチンと干渉するというエビデンスはなく、他のワクチンとの接種間隔に制限はありません。

乳児期には、Hibワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチン、DPT-IPV、BCG、ロタウイルスワクチンなど、多数のワクチンを限られた期間に接種する必要があります。また海外渡航者においても、渡航先によっては、渡航前の短期間に、多数の予防接種を受ける必要があります。今回のワクチン接種間隔規定の緩和によって、ワクチン接種のスケジュールが調整しやすくなり、より確実に接種機会を確保できるようになることが期待されます。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/202002/564168.html(日経メディカル)
第36回分科会資料(2019年12月23日):https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000588375.pdf
第37回分科会資料(2020年1月27日):https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000588558.pdf

(2)HPVワクチンについて

日本では、2013年4月からHPVワクチンが定期接種の推奨となりました。しかしながら、ワクチン接種後の副作用の懸念のため、2013年6月14日に、厚生労働省は積極的接種勧奨を取りやめました。ワクチン接種率は70%から1%以下にまで低下し、その後も積極的勧奨の再開には至っておりません。日本小児科学会や、日本産科婦人科学会では、積極的接種勧奨の再開について、厚生労働省に要望書を提出しております。

小児科学会:https://www.jpa-web.org/dcms_media/other/04_子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)積極的接種勧奨再開に関する要望書.pdf
日本産科婦人科学会:http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20200121_youbousho.pdf

また、日本のHPVワクチンに関するモデル研究が、2020年2月に発表されました。
https://www.thelancet.com/journals/lanpub/article/PIIS2468-2667(20)30010-4/fulltext

日本のHPV陽性率、スクリーニング方法・普及率や、子宮頸がんの罹患率・死亡率等を元に解析した研究です。日本では、2013-2019年にHPVワクチンの積極的接種勧奨が取りやめられたことにより、1994年-2007年生まれのうち、5000-5700人の子宮頸がんによる死亡につながったと推定されております。2020年にワクチン接種率が回復すると、14800−16200人の子宮頸がんの罹患、3000−3400人の死亡を防ぐことができますが、2020年以降も接種率が回復しなければ、今後50年間(2020−2069年)で、予防できるはずの子宮頸がんにより、9300−10800人が死亡する、と推定されています。

日本産婦人科学会のサイトでは、HPVワクチンに関する情報提供が行われております。
http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
http://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/WHO-slides_CxCaElimination.pdf
http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20191126_shiryo.pdf

日本では現在、サーバリックス(2価ワクチン)、ガーダシル(4価ワクチン)が定期接種として接種可能ですが、米国を含め多くの諸外国では、ガーダシル9(9価ワクチン)が標準的に推奨されています。従来の2価、4価ワクチンでは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスのうち、約70%をカバーするのに対し、9価ワクチンでは、約90%をカバーすることが可能です。日本でも今後、9価ワクチンが使用可能になることを期待していますが、亀田総合病院(京橋クリニックでも感染症科外来を行っております)では先駆けて、ガーダシル9(9価ワクチン)を輸入しており、接種が可能です。

その他、小児ワクチン、キャッチアップ、渡航前ワクチン相談など、ワクチンに関わるあらゆる相談に対応致しますので、是非外来にお越しください。

亀田総合病院 感染症内科 西原 悠二

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育