MELIT trial

MELIT trial
Effect of Administration of Ramelteon, a Melatonin Receptor Agonist, on the Duration of Stay in the ICU : A Single-Center Randomized Placebo-Controlled Trial
Crit Care Med. 2018 Mar 27. PMID:29595562

せん妄はICU患者で人工呼吸期間・ICU滞在期間を延長し、高い死亡割合と関連し医療コストを増やす。ICU患者ではメラトニン分泌が抑制されており、せん妄にはメラトニン分泌が関連していると報告されいている。このためメラトニンを補充することでせん妄が抑制されるという仮説が成り立ち、その可能性が示唆されてきた。しかし、RCTでICU患者にメラトニンを投与することで重症患者のアウトカムを改善するかは検証されていない。 
本研究ではICU患者に対して予防的にメラトニンを投与することでICU滞在期間を短縮しアウトカムを改善するという仮説を検証した。

デザインは単施設、並行群間、三重盲検、プラセボ対照群RCTで、名古屋大学附属病院の内科・救急ICUで行われた。期間は2015年5月〜2017年4月で、88人のICU入室48時間で経口もしくは経鼻胃管から投薬可能な集中治療患者を対象にラメルテオン8mg/day群とプラセボ群を対象にICU滞在期間を主要評価項目として行われた。主要評価項目であるICU滞在期間は4.56 days (2.10-7.07 d) vs 5.86 days (2.97-14.16 d)p = 0.082と有意差はなかったが、多重線形回帰分析では有意差を認めた(P=0.028)。副次評価項目のせん妄発症割合は24.4% (11/45) vs 46.5% (20/43) (p = 0.044; odds ratio, 2.69 [1.09-6.65])、せん妄期間は0.78 vs 1.40 d; p = 0.048、ICU死亡は6.7% (3/45)vs 7.5%(3/43)であった。

この研究ではランダム表の生成方法と運用方法が不明、隠蔽化が未記載、マスキングが確実に行われたか不明、2年間で98人しかスクリーニングされず選択バイアスの可能性、ソフトエンドポインであること、群間差が大きくランダム化に失敗している可能性などrisk of biasが高い。主要評価の解析も過剰適合性、多重共線性の問題がありそうで結果の信頼性は低いと解釈した。過剰適合性の対処としてモデルに組み込む因子を減らし、VIFを報告した上で結論を出したほうが良いと考える。また不十分なマスキングとソフトエンドポイントではRCTといえど結果の信頼性が低い。せっかくのRCTなのでマスキングの評価(マスキングのモニタリング、剤形や重さの統一、どの時点で粉砕するかなど)と実際の退室状況を記述すべきであると思う。

この研究では主要項目の結果はnegativeであったが、メラトニン分泌低下患者へのメラトニンの補充というコンセプトは有望な仮説だと考えている。現在主要評価項目をせん妄発症割合とした、メラトニンによるせん妄の予防効果を検証する多施設二重盲検プラセボ対照群RCTであるPro-MEDIC研究が進行中で、2019/3月に終了予定である。この結果をみて、ICU患者へのメラトニン製剤の使用の判断をするつもりである。

科内向けにROB評価をしつこく行ったが、この研究はpilot研究的位置づけの研究であり、そもそも多くの突っ込みをすること事態にはあまり意味はないかもしれない。むしろ、RCTのしづらい日本においてこのような研究が行われたことに個人的には感銘を受けた。昨年のDESIRE研究に引き続き、日本人研究者からのRCTの報告は若手研究者のモチベーションを上げる材料であり、研究者らには賞賛を送りたい。

Reviewer: Ryohey Yamamoto

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科