生理食塩液か緩衝化晶質液か...!?

先週、ICUとの合同Journal Clubを開催しました。

亀田ICUはevidenceに基づく質の高い診療をしていることで、定評があります。救急科もICUと診療提携しつつシームレスにpracticeを共有する工夫に努めています。

今回は「ERでの初期輸液は生理食塩液か緩衝化晶質液か」という疑問の元に合同Journal Clubを開催しました。
救命救急科では今後は薬剤の配合変化や利便性を検討しつつ、緩衝化晶質液を使用していく予定となりました。


かねてより生理食塩液は高Cl性代謝性アシドーシス、腎障害、死亡を増やすのではないかとされてきたが、本研究以前にこれを証明したランダム化比較試験は存在しなかった。
成人のICU入室患者を対象とし、等張液として緩衝化晶質液を投与する群と生理食塩液を投与する群で、死亡、新規の腎代替療法、持続性の腎障害という複合エンドポイントの発生率を比較した、単施設オープンラベルクラスターランダム化多重クロスオーバー試験。

結果として緩衝化晶質液群では、複合エンドポイントの発生が有意に少なかった(緩衝化晶質液群14.3% vs 生理食塩液群15.4%, marginal odds ratio, 0.91; 95% CI, 0.84-0.99; conditional odds ratio, 0.90; 95% CI, 0.82-0.99; p=0.04, ARR 1.1%, RRR 7.1%, NNT 94)。

単施設のため一般化可能性に問題があり、盲検化はされていない。線形混合モデルでランダム効果として考慮されているとはいえ、集中治療室単位でのクラスターランダム化が恣意的ともいえる操作を受けており、未知の交絡因子について十分に調整できているか疑問が残る部分がある。しかしながら、等張液の違いによる現実的で臨床に直結するアウトカムについて大きなサンプルサイズで検証した意義は大きい。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科