Journal Club

今年1回目のjournal clubより...

この研究が主に行われたオーストラリアではRBC輸血の保存期間が42日と定められている。重症患者において盛んに輸血が行われるが、保存期間が長くなると、溶血が進むといった変化が起こり、その結果死亡率が上がるといわれている。そのため、今回ICU入室患者において、新鮮なRBCから優先的に輸血を行うshort-term storage群と、 通常と同じようにRBC輸血を行うlong-term storage 群(古い輸血から優先的に使用)にわけ、primary outocomeを90日死亡率として検証が行われた。 secondary outcomesとしては、28日死亡率、28日での臓器不全、28日での人工呼吸器フリーday、28日での腎代替療法フリーday、ICUでの血流感染、ICU入室期間、Febrile non-haemolytic transfusion reactionsの有無、EQ-5D score(QOLに関するスコアリング)に関して検討された。

期間は2012年11月から2016年12月までで、参加したのは5か国59施設(オーストラリア42施設、ニュージーランド8施設、アイルランド6施設、フィンランド2施設、サウジアラビア1施設)。前提として、そのうち2か国(計43施設)はRBC輸血の保存期間が42日間、3か国(計16施設)は35日間であった。
4,994症例が本研究の対象となった。両群間でbase lineのcharacterに違いはなく、輸血量にも違いはなかった。それぞれRBC輸血の貯蔵期間の中央値は10.7(8.3-14.1)日、21.4(16.7-27.4)日であった。結果としてprimary outocome の90日死亡率には違いはなかった。またsecondary outcomesの中でFebrile non-haemolytic transfusion reactionsに関してはshort-term storage群で頻度が多かった。

この研究のstrengthとしては、多国多施設のRCTでサンプルサイズが大きいことが挙げられる。あえてweaknessの検討をするとすれば大量輸血に関してはあまり検討がなされていないことが挙げられるが、総じて非常によくデザインされた研究であった。
日本ではRBC輸血の保存期間が21日間に設定されており、この研究のlong-term storage群の貯蔵期間の中央値を下回っており、このことからも我々の診療に変更はないと考える。

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Age of Red Cells for Transfusion and Outcomes in Critically Ill Adults. Cooper DJ N Engl J Med. 2017 Nov 9;377(19):1858-1867. doi: 10.1056/NEJMoa1707572. Epub 2017 Sep 27.


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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科