NHFは免疫不全患者の急性呼吸不全を改善するか

Effect of High-Flow Nasal Oxygen vs Standard Oxygen on 28-Day Mortality in Immunocompromised Patients With Acute Respiratory Failure The HIGH Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2018 Nov 27;320(20):2099-2107. doi: 10.1001/jama.2018.14282. Azoulay E. et al.

[Introduction]
免疫不全患者の呼吸不全は死亡率が非常に高い。ICUにおける免疫不全者の呼吸不全において1つのRCTで副次評価項目でナーザルハイフロー(High-flow nasal 以下HFC)は人工呼吸器装着率、90日死亡率を改善する可能性が示されたが、2つのRCTの事後解析では通常酸素療法(Standard oxygen therapy 以下SOT)と比較して死亡率、人工呼吸器装着率に有意差を認めなかった。今回免疫不全患者の急性呼吸不全に対してSOTと比較してHFN死亡率を改善させるかという仮説を立てて検証した。

[Method]
本研究は32のフランスの施設で2016年5月から2017年12月まで行われた大規模オープンラベルランダム化比較試験である。対象はICUに入室した18歳以上の1型呼吸不全を呈した免疫不全患者である。免疫不全患者はステロイドの長期利用(3ヶ月以上)/高容量利用(0.5ml/kg以上)、他の免疫抑制利用、固形臓器移植者、5年以内に化学療法を施行した固形癌患者、血液腫瘍患者、原発性免疫不全患者と定義した。割付は1:1でHFNとSOTに振り分けられた。主要評価項目は28日の死亡率、副次評価項目は28日の人工呼吸器装着率、呼吸数、PiO2/FiO2 ratio(以下P/F)、不快感、呼吸困難感、ICU/在院日数、ICUでの感染率などとした。サンプルサイズはFLORALI trialを参考にし30%の死亡率が介入によって20%へ減少する(絶対リスク差)と仮定し、両サイド検定でα=0.05,1-β0.90とし779人と推定した。100人の死亡が出た時点で中間解析が予定され続行の可否が判断された。

[Discussion]
期間中に1464人がInclusionされ、778人(HFN群389人、SOT群389人)が登録された。主要評価項目である28日死亡率はHFN群138人(35.6%)、SOT群140人(36.1%)で有意差は認めず(Risk difference 0.5% 95%信頼区間[-0.73%-+6.23%])、副次評価項目である人工呼吸器装着率、ICU/在院日数、ICUでの感染率で有意差を認めなかった。また呼吸数、P/FではHFN群で早期で改善が一部認められ、不快感、呼吸困難感には有意差を認めなかった。

[Implication]
本論文は二重盲検ではないが、多施設で症例数も多く、除外や脱落も少ないなど研究デザインの質は高い。現状では、免疫不全患者においてSOTと比較してHFNの治療は死亡率を改善させるとは言えない。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科