EOLIA 〜BayesianによるPost hoc解析〜

Extracorporeal Membrane Oxygenation for Severe Acute Respiratory Distress Syndrome and Posterior Probability of Mortality Benefit in a Post Hoc Bayesian Analysis of a Randomized Clinical Trial
Ewan C. Goligher, MD, PhD1,2,3; George Tomlinson, PhD2,3,4; David Hajage, MD, PhD5; et al
JAMA. 2018;320(21):2251-2259. doi:10.1001/jama.2018.14276
Reviewer :Saburo Minami

EOLIA(Extracorporeal Membrane Oxygenation for Severe Acute Respiratory Distress Syndrome)研究は早期 ecmo とクロスオーバーありの標準治療を比較したRCTである。無益性により中間解析で早期試験中止となったが、主要評価項目において事前設定された治療効果量(RelativeRisk0.67)はみられなかった。

当研究はEOLIAのデータを利用してBayesianによりPost hoc解析を行った。事前priorを2つの方法で定義した。1つ目は専門家の意見の相違を数学的に表現した(熱狂的な支持者、支持者、懐疑者、強い懐疑者の4群でそれぞれRRを以下のごとく設定した。熱狂的な支持者においてはEOLIAの事前想定されたRR0.67としてSDを0.25、支持者においてはARMAの肺胞低換気戦略で見られた治療効果RR0.78、SDを0.15、懐疑者はRR1.0、SD0.24、強い懐疑者はRR1.0、SD0.15としてpriorを作成した。もう1つはSystematic reviewを含めた4研究を利用し、混合効果モデルからpriorを作成し、統計学的異質性に対して分散を拡張させる(0〜100%)ことでvariationを作成した。EOLIAの結果を含めLikelihood functionを計算し、Markov chain Monte Carlo modelingを使って、治療効果を推定し、95%信頼区間を算出した。

結果、RR<1である確率は様々事前設定にかかわらず、89%〜99%であった、一方、少なくとも20%以上死亡率を改善させる確率は0〜48%だった。以上から当研究の結果からECMOは明らかな死亡率の改善はみられるものの、その程度は小さいといえる。但し、研究後に設定されたpost hoc解析であるため参考所見となる。

これまでの医学研究ではサンプルサイズ計算においてこれまでの研究結果を反映させ、帰無仮説を検証し、その研究単体の結果を判定するものだった。しかし、実現可能性のため現実的でない治療効果が設定され、有意差はないと判定される傾向があった。その現実を前に臨床医は過去のデータの自身の解釈や経験をもとに真実を推測してきた。しかし、当研究のbayesian analysisは事前のpriorの設定で臨床家の意見を事前確率で表現し、新規研究のデータをもって事後確率を算出し、定量的に様々解釈を提示することを可能性にした。この分析は感度分析に近く、様々な仮定においても結果が一致する場合は結果の確実性が強固であることを証明する。
但し、bayesian analysisは医学研究に馴染みがなく課題もある。reporting guidelineがなく、事前設定されるpriorのconsensusが広く得られる体制がないことである。そういった条件がそろえば今後の臨床研究において新たな解釈がうまれ、さらなる研究が必要がどうかの重要な判断材料を提供しうる。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科