敗血症に伴う重度の急性腎障害に対する腎代替療法の最適時期は?

Timing of Renal-Relacement Therapy in Patients with Acute Kidney Injury and Sepsis
N Engl J Med 2018;379:1431-1442 DOI: 10.1056/NEJMoa1803213

【Introduction】
複数の先行研究において、重度の急性腎障害(AKI)に対する腎代替療法(RRT)の早期導入は予後改善につながることが期待されていた。高K血症や代謝性アシドーシスなどの緊急性の高い場合では速やかにRRTが施行されるが、そうではない場合、重度のAKIを伴う敗血症における対応は議論が分かれている。

【Research Question】
敗血症性ショックに伴う重度AKIに対するRRTの早期導入は、予後を改善させるか。

【Methods and Conclusion】
本研究(IDEAL-ICU trial)は、2012年7月〜2016年10月にフランスの29の施設で行われた多施設共同非盲検無作為化試験である。敗血症性ショック(昇圧薬使用から48時間以内)に伴う重度AKI(RIFLE基準のFailureを満たす)でICUに入室した18歳以上の成人に対し、12時間以内にRRTを施行する群(Early群)と48時間後にRRTを施行する群(Delayed群)に割り付け、90日死亡率を比較した。予定されていた2回目の中間解析で、差を確かめるために実現不可能なSample数を要することが判明したため中断となり、Early群とDelayed群で90日死亡率に有意な差はなかった(58% vs 54% (P value 0.38))。

【Implication】
本研究は、AKIKI、ELAINに引き続き3つ目の大規模RCTである。Inclusion criteria (重度のAKI)と治療開始時間の差 (Early群とDelayed群の差)において、AKIKIと類似点が多く、結果も同様で、RRTの早期導入は予後を改善しなかった。クレアチニン上昇や乏尿だけでは緊急透析の適応にならず、少なくとも48時間は許容される可能性がある。
本研究は早期中止試験のため安全性評価の信頼性に劣るが、実現不可能なSample sizeが算出されたことから、今後さらなる大規模のランダム化比較試験が行われるかは疑問である。今後は、透析が必要な集団の特定に関するさらなる研究が期待される。

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このサイトの監修者

亀田総合病院
救命救急センター センター長/救命救急科 部長 不動寺 純明

【専門分野】
救急医療、一般外科、外傷外科