野球検診
【概要】
野球で起こりやすい障害の一つに野球肘があります。ある少年野球選手を対象とした調査では、「疼痛発生頻度が最も多いのは肘関節であった。」との報告もあります。また、少年野球選手の20〜40%に発生するとも言われています。
このような野球肘の早期発見・早期治療・予防を目的とした検診を「野球肘検診」と言います。日本では1981年に徳島県で開催されたのが最初の「野球肘検診」とされており、それ以降は日本各地でこのような検診が行われています。
特に成長期での野球肘の早期発見・治療・予防が重要であり、当院でも主に地域の少年野球チームを対象に「野球肘検診*1」を行っています。
*1医療機関での通常の保険診療とは異なり、体育やグラウンドなど現場でのスクリーニング検査です。
【当院の野球肘検診の内容】
1 野球肘教室
野球肘治療の経験豊富な医師、理学療法士により野球肘の病態、予防法などの座学を行います。子ども達、保護者、指導者と共に野球肘について知識を深めていきます。

2 身体機能チェック(柔軟性・筋力・バランス)
投球動作は全身運動です。そのため、全身の柔軟性や筋力、バランスが重要となります。特に投球動作において重要と言われているような肩関節・股関節の柔軟性のチェックや肩関節周りの筋力のチェック、下半身のバランスのチェックなどを行います。そして、チェックの結果に応じて自宅で行えるストレッチや筋力・バランストレーニングの指導も行っています。

3 投球フォームチェック
実際の投球動作を行ってもらい、肘に負担のかかりやすいような投球フォームになっていないか?(例:肘下がりになっていないか?など)をチェックします。

4 超音波診断装置による肘関節のチェック
当院の野球肘検診では、「超音波診断装置」を用いて肘関節の状態をチェック致します。超音波診断装置を用いる事で、肘関節の骨や軟骨・靭帯の状態が観察できます。特に離断性骨軟骨炎という骨・軟骨障害の早期発見には有用であり、野球肘検診において、超音波診断装置を用いる事で検診の精度が高くなることが期待できます。

【出典】
1) 松浦哲也ほか:少年野球肘検診一障害の早期発見・早期治療と予防をめざして一.関節外科27: 1089-1095, 2008.
2) 渡辺千聡:野球肘の超音波診断.関節外科 31(4): 389-396, 2012.
3) Benjamin,H.er al:Little league elbow.Clin.J.Sport Med.15(1);37-40.2005.
このサイトの監修者
亀田総合病院
スポーツ医学科主任部長 大内 洋
【専門分野】
スポーツ整形外科、関節鏡手術、スポーツ整形外科疾患に対する超音波診断
PRP療法、体外衝撃波、高気圧酸素治療の最新治療法