卒業生便り(猪野 先生)

昨年度に1年間の短期研修をしてくださった猪野先生から、当科での研修の感想をいただきました!
いつも前向きに仕事に取り組んでおられ、凄まじいスピードで知識を吸収していたのが印象的でした。
またいつか一緒に働けることを楽しみにしております!

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(1)先生の経歴を簡単に教えてください。
自分は自治医科大学の卒業生であり、卒業後は出身の高知県内の僻地医療機関での勤務が義務付けられていました。高知県内の3次医療機関で初期研修を行った後は3年目より地域医療に従事していました。医師3年目で初めて赴任した病院は25床、医師数3人、院長は自分が医学部1年生の時の6年生で部活の先輩でした(笑)。地域の医療機関を転々と勤務し、医師7年目時点で1年間の後期研修期間を得ることができたので、亀田病院で研修を行わせていただきました。

(2)当科での研修を選んだきっかけを教えてください。
少し前置きが長くなりますが、、
専門医がいない田舎の病院で総合内科医として働く中で、一般的な生活習慣病の管理や救急患者への対応等に加えて、がん患者を拾い上げて紹介するということも自分の業務の一環となっていました。メジャーながんに加えて、原発不明がんや神経内分泌がん等の希少がん患者にも関わる機会があり、その都度各専門科へ紹介していましたが、その先について自分も知りたいと考えるようになったのがきっかけでした。がんと診断する事ができても、その際の「これから自分はどうなるのか、どんな治療を受けた方が良いのか」、患者さんからの問いに曖昧に逃げるようにしか答える事ができなかった自分をとても情けなくも思っていました。そして特定のがんでは無く、様々ながん種について広く勉強したいと考え、ネットサーフィンの末に辿り着いたのが亀田病院腫瘍内科のホームページでした。

(3)研修で学びになったことや、得られたことはありましたか?
亀田病院腫瘍内科では様々ながん腫の診断から看取りまで一貫して行なっています。ざっと自分が経験したがん腫を挙げると、大腸癌、胃癌、膵癌、胆嚢癌、胆管癌、肝臓癌、肺癌(腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌)、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、体癌、腎細胞癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、尿道癌、各種頭頸部癌、悪性黒色種、神経内分泌癌、胚細胞腫瘍、メルケル細胞癌等、加えて各種肉腫、重複癌患者も多く経験出来ました。毎日がん患者さんの診療に関わる中で、半年程経つと、大体のがんの治療選択肢やstage別の予後、初診で診た患者さんがその後どのような経過を辿っていくのかイメージできるようになりました。またがん患者さんへの繊細な内科的管理、急変対応、terminal期での緩和ケアについても多くのことを学ぶことができました。手技的な面を気にする方も居るかもしれないので、自分が1年間亀田病院に居て行なった手技を列挙すると、胸水、腹水ドレナージは日常茶飯事、トロッカーやアスピレーション留置、PICCやCV挿入、ルンバール、マルク等、一通りの内科的処置は経験することができます。
また今後がん診療で困った際に、いつでも相談できる繋がりを作ることができたのも自分にとってはとても大きな財産です。

(4)研修で大変に感じたことはありましたか?
腫瘍内科、というよりも亀田病院全体について言えることかもしれませんが、後期研修医へ委ねられている裁量が大きいことが、非常に良い点でもあるのですが慣れないうちは大変でした(笑)。担当した患者さんについては今までの治療経過や全身状態、社会背景、患者さん本人の価値観含め全てを把握した上で今後のplanを立てる事が求められます。どの抗がん剤をどの程度使い治療を行うか以外にも、日々の厳格な内科管理、緩和的治療、転帰調整まで、常に上級医は見守ってくれてはいますが、後期研修医に一任されます。自分としては成長する上でこれ以上無い環境だと感じましたが、人によっては大変だと感じる人もいるかもしれません。
また亀田腫瘍内科の一番の特色かもしれませんが、担当させていただける外来患者数も多く(4月から早速始まりドンドン増えます、自分は最終的には様々ながん腫を偏り無く1日当たり20人前後を診させていただいていました)、がん進行時の次レジメン、起こり得る問題を予測し状態悪化時の対応をどうするか等の予習が必須だったので、それも大変は大変でした。

(5)どのような人に当科での研修をおすすめしたいですか?
全ての医師にお勧めします。
最低でも半年、亀田腫瘍内科で経験を積めば、あらゆる固形癌に対する基本的な知識は身に付けることができると思います。また、いわゆる「釣り方」を教えてくれるので、日々直面するclinical questionに応じてどの媒体を検索すれば良いのかが分かるようになります。がん診療の知識は日進月歩ですが、研修後にもその経験は活き続けます。
それらは医師としての大きな力となるだけでなく、自分の家族や友人、身近な人ががんになった時にも大いに役立つと思います。

(6)最後に、先生の今後の意気込みをどうぞ!
今はまたど田舎で地域医療に従事していますが、最終的にはがん薬物療法専門医を取得してがん治療も行える総合内科医として地元高知に貢献できればと考えています。

このサイトの監修者

亀田総合病院
腫瘍内科部長 大山 優

【専門分野】
がんの包括的医療、病状に応じた最善の治療の選択と実践