朝レクチャー

当科では毎週金曜日の朝に勉強会を行っています。
本日は大山部長による「がんの緊急症」のレクチャーでした。
代表的なOncologic Emergenciesとしては、発熱性好中球減少症や脊髄圧迫、腫瘍崩壊症候群、上大静脈症候群、高カルシウム血症などがあります。本日はこれらに加え、免疫療法による有害事象にもフォーカスを当てました。その中でも特にCRS(サイトカイン放出症候群)の話題で盛り上がりました。
CRSは比較的最近提唱された疾患単位で、主に患者自身の免疫細胞から一気に大量放出された炎症性サイトカインにより、全身に重篤な炎症反応が急激に生じて種々の障害をもたらす症候群です。原因は免疫チェックポイント阻害薬やCAR-T細胞療法、二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体、分子標的薬などがあります。被疑薬を開始して数日以内に急激に発症することが多く、発熱や循環不全、低酸素血症、中枢神経症状、肝障害、皮疹などがみられます。中枢神経症状が主体のものは免疫エフェクター細胞関連神経毒症候群(immune effector cell associated neurotoxicity:ICANS)と呼ばれます。治療は被疑薬の中止のほかは全身管理が重要となり、ステロイドの使用も検討されます。不応例ではトシリズマブを使用することもあります。
免疫チェックポイント阻害薬の適応はどんどん拡大しており、免疫療法による有害事象に遭遇する頻度はさらに多くなると思われます。救急外来のセッティングでも遭遇する可能性があり、がん治療医以外も初期対応できることが今後求められる領域でしょう。当院ではIrAEの院内対応マニュアルが設置されており、職員は誰でも参照できるようになっています。
さて、今年も当科では腫瘍内科セミナーを企画しております。日程は7月16日〜17日で、今年も2日間オンライン開催で充実した内容をお届けします。免疫療法に関するレクチャーも予定していますので、ご都合の合う方は是非ご参加ください。詳細な情報は次週公開予定です!
今後は更新頻度を多くする予定ですので、乞うご期待ください!

このサイトの監修者

亀田総合病院
腫瘍内科部長 大山 優

【専門分野】
がんの包括的医療、病状に応じた最善の治療の選択と実践