卒業生便り(vol.8 西 先生)

当科へローテーションにいらした当院家庭医・総合診療科の西先生より卒業生便りをいただきました。医師として良い経験をしていただき、大変嬉しく思っています。当科は、腫瘍内科ストレートの研修以外にも一定期間のローテーションも受け付けております。外部医師でも可能です。ご興味のある方は「お問い合わせ」よりご連絡ください。


亀田総合病院腫瘍内科には初期研修中に1ヶ月、家庭医の後期研修中に2ヶ月ローテーションしました。

元々は「家庭医マインドを持った腫瘍内科」になるつもりで初期研修を始めましたが、研修の中で、より自分がやりたいことは何なのかについて見つめ直し、悩んだ末に家庭医・総合診療医の道を選びました。

家庭医・総合診療医として働く中で、がんを見つけて腫瘍内科に紹介したり、逆に積極的治療が継続困難になり、腫瘍内科から訪問診療を依頼されることがよくあります。紹介先・紹介元である腫瘍内科で何が行われているのか、患者さんとはどのような話し合いが行われているのかを、実際に見て学ぶために後期研修でも腫瘍内科をローテーションさせていただきました。

ローテーションでは、化学療法による典型的な副作用とそのマネジメント、オンコロジックエマージェンシーの初期対応、オピオイド の使い方など、非腫瘍専門医にも必要とされる内科的知識・技術を中心に学びました。おかげで総合診療科に戻って、病棟や救急外来で担がん患者を担当することになっても、落ち着いて対応できるようになりました。

最も勉強になったのはコミュニケーションでした。腫瘍内科の先生方の意思決定能力の評価、治療適応の判断、意思決定支援、家族カンファレンスの組み立て方にはとても学ぶ所が多かったです。実際に私も、初診外来における病状告知・治療方針の選択、化学療法継続困難となったときの治療中止に関する話し合いといった大事な局面でのコミュニケーションを経験させていただきました。その中で患者さんの色んな思いに触れました。初めて腫瘍内科を受診する時の不安、ボロボロになっても治療を続けたい必死の思い、治療継続が困難となったときの絶望と見捨てられ感、、、家庭医・総合診療医は最後の受け手としてがん患者さんと接することが多いですが、彼らがこれまでどのような思いで治療をしてきて、自分の目の前に行き着いたのかが、イメージできるようになりました。

腫瘍内科の先生方と顔が見える関係を築けたことも大きいです。相談の閾値が下がり、気軽に患者さんについてやりとりできるようになりました。最近では腫瘍内科で化学療法中の患者さんを、早期から家庭医が併診し、将来のスムーズな在宅移行に備えるケースも出始めて、良い形で連携させていただいていると感じています。

個人的には腫瘍内科と家庭医療・総合診療は親和性が高いと思っています。行う治療という点では全く異なりますが、治療の過程で、エビデンスだけでなく、患者さんの意思や価値観を尊重しながら、一緒にその後のことを考えていくという姿勢は共通です。これからも腫瘍内科と家庭医・総合診療医の相互交流を深めて、連携を強めていけたら嬉しいです。

2人に1人ががんになる時代。どの科に進んでもがんとは無縁ではいられません。
腫瘍内科にならない研修医・専攻医も一定期間腫瘍内科をローテーションすることを強くお勧めします。

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安房地域医療センター
西 明博

このサイトの監修者

亀田総合病院
腫瘍内科部長 大山 優

【専門分野】
がんの包括的医療、病状に応じた最善の治療の選択と実践