コラム

第1回 むくみとは? 〜血管系とリンパ管系の違いを知ろう〜

リンパ浮腫に関する基礎的な知識や治療法を、最新の知見や世界の動向も交えながら、みなさんに定期的にお伝えしていきます。


ヒトの体液の循環は、主に動脈・静脈、リンパ管が担っていることが知られています。それぞれ血管系、リンパ管系と呼ばれています。
まず、血管系では動脈が毛細血管に移行し、約90%が直接静脈に流入して循環します。こちらは、おそらく学校などで『心臓から送り出されるきれいな血液が流れる血管を動脈、全身から心臓にもどってくるよごれた血液が流れる血管を静脈といいます」と習うことが多いので馴染みがあるかもしれません。

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一方で、リンパ管系ですが、静脈(毛細静脈)に回収されなかった残り約10%の体液は、間質液と呼ばれる液体となり全身の隅々でリンパ管に吸収されます。この吸収された間質液がリンパ液であり、リンパ管の中を通り合流を繰り返し太くなっていきながら、静脈と同様に心臓の近くまで戻っていきます。さらに、心臓の近くの"静脈角"と呼ばれる場所で、リンパ管は静脈に流入し、体液の循環に戻っていきます。リンパ液は、成人で約1リットル/日の流量があり、体液の循環において大きな役割を担っています。

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腫れ」と「むくみ」は、体表に起こる変化として使われますが、病態は全く別のものであり、先ほど説明した血管系とリンパ管系の違いを理解するとわかりやすくなります。

腫れ」:血液成分が血管の外で貯留してしまい、体積が増加した状態になること。医学用語では、"腫脹"と呼びます。
むくみ」:(1)血管系・心臓の循環機能や腎臓の排尿機能が低下して、体に水分がたまり膨れた状態になること (2)過剰なリンパ液がリンパ管の外で回収されずに貯留してしまい、結果として膨れた状態になること。医学用語では、これらを"浮腫"と呼びます。

腫れやむくみの原因は様々なものがありますが、がんの手術や治療の影響でリンパ機能の低下を起こし、それが原因となって腕や足のむくみが起きる状態になることを、(がん術後の)リンパ浮腫と言います。

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次回は、リンパ浮腫についてもう少し詳しくお話しします。