CDI(Clostridium difficile infection)

CDIについてまとめました。このようなまとめを、各フェローが自主的に作成して、皆で共有しています。また、この内容を簡略化したミニレクチャーを、時間があるときに、フェローが、ローテーターに行っています。ご興味あるかたは、ぜひ見学に来てくださいね!

CDI(Clostridium difficile infection)

★要点★

  • CDIは、抗菌薬下痢症の20-30%を占め、入院患者の感染性下痢症の原因で最多
  • 抗菌薬使用歴のある入院患者で、1日3回以上の下痢があった場合に、CDI検査する
  • 検査:CDトキシン/GDHを行い、必要時に応じて、便培養(トキシン検査含む)を追加
  • 治療:初回Metronidazole、再発1回目VCM、再発2回目VCM tapered and pulsed regimen
  • 感染対策:接触感染対策(症状改善してから48時間まで)、手洗いは流水と石鹸


(1)導入・疫学1,6,7,10)

  • CDIの定義(典型的なpresentation)
     - 24時間以内に3回以上の水様性便
     - 便検査で毒素産生C. difficileまたはトキシン陽性
      or 偽膜性腸炎を示す病理組織または大腸内視鏡所見
  • CDIは、抗菌薬下痢症の20-30%を占め、入院患者の感染性下痢のもっとも多い原因
  • ほとんどのCDI患者は、下痢発症前14日以内に抗菌薬の投与歴がある6,7)
     10-12週間を超えて発症することは稀
  • CDIの症状は通常colonizationしてからすぐに(中央値:2-3日)始まる7)
     ただし、最近の研究では、もっと長い(1週間 etc)可能性が指摘されている1)
  • リスクの高い抗菌薬:CLDM、FQ、広域セファロスポリン、カルバペネム1, 6)
  • CDI発症リスク:抗菌薬使用、高齢、入院期間、PPI、化学療法、IBDなど1, 7. 10)
  • CDI再燃リスク:高齢、抗菌薬併用の必要性、再発歴、腎不全、PPI、初発時の重症度など10)
  • 再発:6-25%7)、最新のガイドラインには25%と記載されているが日本のdataではない1)
     ※NEJMの総説13)では、1回目の再発率は20%、複数回再発している場合の再発率は60%

(2)診断1,6)

  • 症状:下痢、下腹部痛、発熱(約15%)、食欲低下、下血や鮮血便は稀
  • 入院患者の説明できない白血球増加をみた場合は、CDIの可能性を考慮する7,9)
  • CDI検査の対象:24時間以内に3回以上の新規の下痢を発症した患者
  • 提出する検体は、下痢便である必要がある
     例外は、ileusの場合:この場合はswabが許容される(感度が十分)6)
  • 検査方法:複数のstepを踏んで行うことが一般的に推奨される
     - 米国での推奨:GDH+CDトキシン→NAAT or NAATのみ
     - 現在の日本での現実的な対応:1.GDH+CDトキシンを測定
      GDH陽性=Clostridium difficileが存在する(トキシン産生の有無は問わない)
      トキシン陽性=「トキシン産生」Clostridium difficileが存在する
      - GDH陰性かつトキシン陰性→CDI除外
      - GDH陽性かつトキシン陽性→CDI確定
      - GDH陽性かつトキシン陰性→2.便培養(CCFA培地)を施行しコロニーでトキシン検査
  • 各検査の感度
     - NAAT:感度は非常に高い、特異度はmoderate(無症候性キャリアでも陽性となる)
     - GDH:感度は高い(85-95%)7)、トキシン産生の有無は評価できない(特異度低い)
     - トキシンA/B:感度75%という報告がある(他の報告では70-80%12))、特異度は高い11)
  • トキシンは室温では2時間でdegradeし、検出されなくなる可能性がある6)
  • 検査は、同じ下痢episodeにおいて、繰り返しても診断に寄与しない(目安:7日以内)1)
  • CFはめったに必要とならない(IBDの患者における診断などで有用かもしれない)13)
  • 再発:いったん改善した症状が治療終了後2-8週間以内に再度悪化したもの
  • 「再発」の診断方法は、初回episodeと同様
  • 小児の下痢の場合
     - 12か月未満:トキシン産生C. difficileの保菌が多いため検査すべきでない
     - 1-2歳:その他の原因が除外されなければ、検査はすべきでない
     - 2歳以上:長期間持続または悪化する下痢で、リスクがある場合検査する

(3)治療1,3)

  • 重症度の評価
     - 重症度を評価する確立した指標はない
     - non-severe:WBC ≦ 15000かつCr < 1.5 mg/dL
     - severe:WBC >15000 または Cr ≧ 1.5 mg/dL
     - fulminant:血圧低下(ショック)、イレウス、megacolon
     - 臨床医の判断でOK3)
  • CDトキシン陽性でも、下痢をしていなければ治療対象とならない
  • 治療(前提:不要な抗菌薬は中止する)
     -non-severe disease
     ・初回:Metronidazole 500mg 1日3回 or VCM 125mg 1日4回 10日間
     ・10日の時点で下痢が治癒していなければ、14日間まで延長を検討
     ・Metronidazoleで5-7日以内に症状改善しなければ、VCMに変更検討11)
     ・抗菌薬を継続する場合、その終了から+1週間治療を継続する専門家もいる3)
     ・最新のガイドラインは、VCMまたはfidaxomicinをMetroより強く推奨1)
     ・実際はmetronidazoleで改善する例が多く、コストも低いためMetroでOK
     ・Metronidazoleの欠点:不可逆的な神経系への蓄積毒性(2回目は使用しない)
     ・治療効果判定にトキシン検査を行わない(治療終了後も50-60%程度で陽性となる)
     -severe disease
     ・初回:VCM 125mg 1日4回 or fidaxomicin
     ・Metronidazoleは使用しない1,3)→実際はtryしてもよいと思われる
     -1回目の再発
     ・1回目Metronidazoleで治療した場合:VCM 125mg 1日4回 10日間
     ・1回目VCMで治療した場合:VCM prolonged tapered and pulsed regimen
      VCM 125mg×4/日を2週間、125mg×2.日を1週間、125mg×1/日を1週間
      その後2-3日おきに125mg内服を2-8週間
     -2回目以降の再発
      VCM prolonged tapered and pulsed regimen
      VCM 10日間→rifaximin 20日
      fidaxomicin(VCMより有意に再燃が少ない)
     -それ以降の再発
      fecal microbiota transplantation(成功率81% vs 27%:VCM群)14)
     -fulminant CDI
     ・VCM 500mg 1日4回+Metronidazole 500mg q8h(div)
     ・ileus:VCM注腸追加(500mg を生食100mlに溶解、1時間程度、1日4回)
     -コスト
     ・Metronidazole 500mg 1日3回 10日間:2130円
     ・VCM 125mg 1日4回 10日間:11131円
     ・VCM 500mg 1日4回 10日間:44520円
     ・Metronidazole 500mg q8h div:3756円/日
     ・fidaxomicin 200mg 1日2回 10日間:未定、承認申請中(アステラス)

(4)感染対策1,2,8,13)

  • 接触感染対策が必要
  • 隔離
    - 疑って検査を提出した時点から隔離する
    - 個室隔離が望ましい
    - トイレは共有しない
    - 個室に限りがある場合、便失禁のある患者を優先的に個室隔離する
  • 従事者は、手袋とガウンを着用する
  • 手洗いは、流水と石鹸
  • 環境清掃には、次亜塩素酸を使用する(キッチンハイター)
  • 接触感染対策は、下痢が改善してから48時間までは行う

(5)予防1-3,13)

  • 無症候性キャリアを見つけて隔離することの有用性はまだ確立していない
     トキシン産生C. difficileの無症候性キャリアから伝播してCDI発症するcaseは30%程度1)
  • 抗菌薬の適正使用
  • 不要なPPIの中止(まだevidenceは不十分)
  • probioticsによる1次予防についてのevidenceは不十分
  • バンコマイシンによる2次予防のevidenceも不十分4,5)
  • ベズロトクスマブbezlotoxumabは、再発を27%→17%に減らす15, 17)
    ジーンプラバ®の添付文書によると、1瓶(625mg)330500円16)
     投与量:10mg/kgを単回投与(VCM or Metroなどでの治療中に投与する)
     ※Clostridium difficileトキシンB に対するヒトモノクローナル抗体

(6)参考文献

  1. Clin Infect Dis 2018;66(7):e1-e48(IDSA/SHEAのCDI診療ガイドライン)
  2. Clostridium difficile infection: Prevention and control. UpToDate2018.
  3. Clostridium difficile infection in adults: Treatment and prevention. UpToDate2018.
  4. Am J Gastroenterology 2016;111:1834-1840
  5. Clin Infect Dis 2016;63:651-653
  6. Clostridium difficile infection in adults: Clinical manifestation and diagnosis. UpToDate2018.
  7. Infect Control Hosp Epidemiol 2010; 31(5):431-455
  8. Infect Control Hosp Epidemiol 2014; 35(6): 628-645
  9. Am J Med 2003;115:543-546
  10. Clostridium difficile infection in adults: Epidemiology, microbiology and pathophysiology. UpToDate2018.
  11. Am J Gastroenterol 2013; 108:478-498
  12. Ann Intern Med. 2009;151:176-179
  13. N Engl J Med 2015;372:1539-48
  14. N Engl J Med 2013; 368: 407-15
  15. N Engl J Med 2017;376:305-17
  16. 「ジーンプラバ®」の添付文書
  17. N Engl J Med 2010;362:197-205

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育