渡航ワクチンの接種開始可能年齢について

★まとめ★

  • HBV:年齢関係なし(標準的な定期接種は生後2か月以上)
  • 狂犬病:年齢関係なし
  • 日本脳炎:生後6か月以上
  • 黄熱:生後9か月以上
  • 髄膜炎菌:生後9か月(2歳以上)
  • HAV:1歳以上
  • 腸チフス:2歳以上

1:HAV1-4)

  • 接種可能年齢:下記の2つはいずれも1歳以上から接種可能 2-4)
  • エイムゲンの添付文書の適応の項目には、年齢についての記載なし
  • WHOは1歳以上での接種を推奨している、と記載されている
  • エイムゲン(筋注):0, 2-4w, 24w 2)
  • Havrix(筋注):0, 6-12M(19歳以上:1440単位/回、1-18歳:720単位/回)3, 4)

2:HBV(現在ではroutine vaccine)1, 5-7)

  • 接種可能年齢:生後すぐに接種可能
  • 日本の定期接種の標準的な接種時期は、生後2か月後から接種開始
  • 母子感染予防のためのワクチン接種は、健康保険が適応される
  • ビームゲン:筋注、3回接種、
  • 10歳未満の場合、0.25mlを「皮下注」と記載→筋注する場合は同意書が必要
  • 0, 1M, 6M(日本では、通常生後2か月、3か月、8か月の3回打ち)
  • 米国では、出生24時間以内、生後1-2か月後、生後6-18か月後の3回打ち
  • 3回目接種は、1回目接種と20週以上、かつ、2回目から4か月以上で接種可能→0, 1, 5Mでも接種可能

3:狂犬病 1, 8-10)

  • 接種可能年齢:年齢制限はない
  • 曝露前予防:3回接種
  • 国産ワクチン(皮下注):3回:0, 4w, 6-12M ※筋注の同意書必要
     PCEC-K(精製ニワトリ胚細胞ワクチン)、1回1.0ml
     WHO方式で接種しても、抗体価は十分上昇することがわかっている 9)
  • Verorab(筋注):3回:0, 7d, 21-28d(WHO方式)
  • 曝露前予防
     国産ワクチン
      暴露前予防あり:投与法記載なし
      暴露前予防なし:0, 3, 7, 14, 40, 90の6回打ち
     Verorab
      暴露前予防あり:0, 3の2回打ち(狂犬病免疫グロブリンは不要)
      暴露前予防なし:0, 3, 7, 14, 28の5回打ち(day 0に免疫グロブリン投与)
    ※日本では、狂犬病免疫グロブリンは使用できない

4:腸チフス:Typhim Vi 20)

  • 接種可能年齢:2歳以上で接種可能(2歳未満で効果がない)
  • 1回0.5ml、筋注、2-3年ごとに接種する
  • 効果は50-70%

5:日本脳炎1, 12-13)

  • 接種可能年齢:日本のワクチンは生後6か月以上
  • 米国で使用されているワクチンは、生後2か月以上で接種可能 13)
  • 国産ワクチン:1回0.5ml(3歳未満は0.25ml)、皮下注、0, 4w, 7-12Mの3回接種

6:黄熱1, 14-16)

  • 接種可能年齢:生後9か月以上(6か月未満は禁忌、6-9か月はdata不足)
  • 日本の添付文書では、生後9か月未満の使用不可となっている
  • 生ワクチン、0.5ml、1回、皮下注
  • 1回接種でOK
  • 黄熱の予防接種証明書(イエローカード)の有効期間:
     2016年7月11日以降、「接種10日後から10年間」→「接種10日後から生涯有効」
  • 接種場所:検疫所(約20か所)→成田空港検疫所、東京検疫所、国立国際医療センター、東京医科大学、日本検疫衛生協会東京診療所
  • 詳細な情報は、厚生労働省検疫所HomepageのFORTHを参照 16)

7:髄膜炎菌:4価結合型ワクチン(メナクトラ)1, 17-19)

  • 接種可能年齢:生後9か月以上から接種可能(9-23か月の場合は2回接種必要)17)
  • 日本で行われた臨床試験では、対象を2-55歳としている
  • 「用法及び用量に関連する接種上の注意」18)では、2歳未満での安全性と有効性は確立していない、と記載されている
  • 1回接種、筋注
  • Booster
     2歳未満の場合は、3年後にbooster接種、その後5年ごと
     2歳以上の場合は、5年ごと

8:Routine Vaccine

  • HibとPCV13は生後2か月以上から接種開始(米国では生後6週以降なら可)
  • DTaP:通常生後3か月以上から接種開始(生後6週間から接種可能)20, 21)
  • MMRV:1歳以上で接種開始
  • 麻疹ワクチンは、流行地域へ渡航する場合、生後6か月以上で接種可能 22)
     ただし、1歳を超えてから2回接種する必要がある
     日本の麻疹ワクチンの添付文書では、任意接種であれば、年齢関係なく接種可能 23)
  • 不活化インフルエンザワクチン:生後6か月以上で接種可能
     接種量:3歳未満0.25ml、3歳以上0.5ml
     接種回数:13歳未満2回、13歳以上1回(米国では9歳以上で1回接種)


参考文献

  1. Keystone JS, at al. Travel Medicine, 3rd edition
  2. 「エイムゲン」の日本の添付文書
  3. 「Harvrix」の添付文書
  4. Hepatitis A virus infection: Treatment and prevention. UpToDate2018.
  5. Hepatitis B virus immunization in infants, children, and adolescents. UpToDate2018.
  6. 「ビームゲン」の日本の添付文書
  7. Hepatitis B virus immunization in adults. UpToDate2018.
  8. 「乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン」の日本の添付文書
  9. 感染症誌 2008;82:441-444
  10. 「Verorab」の添付文書
  11. Typhoid vaccine: Drug information. UpToDate2008.
  12. 「ジェービックV(乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)」の日本の添付文書
  13. Japanese encephalitis virus vaccine (inactivated): Pediatric drug information. UpToDate2018.
  14. Yellow fever vaccine (United States: Available via CDC drug service investigational drug protocol only): Pediatric drug information. UpToDate2018
  15. 「黄熱ワクチン 17D-204株」の日本の添付文書
  16. 厚生労働省検疫所FORTH. http://www.forth.go.jp/useful/yellowfever.html#kenekisyo
  17. Quadrivalent meningococcal conjugate (D) vaccine: Pediatric drug information. UpToDate2018.
  18. 「メナクトラ」の日本の添付文書
  19. Meningococcal vaccines. UpToDate2018
  20. Diphtheria, tetanus, and pertussis immunization in infants and children 0 through 6 years of age. UpToDate2018
  21. 「クアトロバック皮下注シリンジ」(4種混合ワクチン)の日本の添付文書
  22. Measles, mumps, and rubella immunization in infants, children, and adolescents. UpToDate2018
  23. 「乾燥弱毒生麻しんワクチン」の日本の添付文書


※実際にワクチン接種する際は、添付文書などご確認の上、実施してください。

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育