Raoultella planticola
【歴史】
- 1981年にKlebsiella planticolaとして初めて記載された。1983年にはKlebsiella trevisaniiとも記載された。ヒト感染症として最初の報告は1984年にFreneyらがフランスの集中治療室の敗血症患者において報告した(1) 。
- 2001年に16S rRNA遺伝子およびRNAポリメラーゼBサブユニット(rpoB)遺伝子の解析に基づき、Raoultella属に再分類された(2) 。
- MALDI-TOF MSが普及し正確な同定が可能となり、症例報告は増加している。
- 当初Klebsiella属菌と同定された菌株のうち0.2〜19.0%が実際にはRaoultella属菌だった(3) 。
【微生物学的特徴】
- 腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌。通性嫌気性菌。莢膜を有し、非運動性。カタラーゼ陽性、オキシダーゼ陰性、グルコース発酵能、乳糖発酵能、ソルボース発酵能、硝酸還元能を有する。多糖体莢膜を産生するため、MacConkey寒天培地上で大きく粘液状のコロニーを形成する。
- 自然界に広く分布しており、主な生息環境は植物、水環境、土壌である。
- 研究では新生児の腸内細菌叢や上気道からR. planticolaが9.9%の頻度で検出された(2) 。
- Raoultella属にはKlebsiella 属に分類されていた Raoultella ornithinolytica、R. planticola、 Raoultella terrigenaが含まれる。
- Raoultella属は、Klebsiella属と生物学的特徴、生化学的特徴、臨床的特徴、微生物学的特徴を数多く共有しており、病原性も類似していると考えられる(3) 。
- Klebsiella属との鑑別点は、10℃での発育能があること。また、ヒスチジン脱炭酸酵素を発現するため、ヒスチジンをヒスタミンに変換する能力を有する(2) 。
【臨床像】
- 菌血症のprimary focusとしては胆道系感染症が最も多く、カテーテル関連感染症、尿路感染症が続く(Figure1)。その他、呼吸器感染症や皮膚軟部組織感染症、結膜炎、化膿性関節炎等の報告がある(4) 。菌血症の3割が複数菌感染だった(2) 。
- R. planticola菌血症とR. ornithinolytica菌血症の間で、臨床的特徴に有意差は認められなかった (4) 。
- 悪性腫瘍、免疫不全状態、侵襲的医療処置がリスク因子。
34例のR. planticola菌血症の文献レビューでは、24例(70.6%)に悪性腫瘍の合併を認めた。内訳は、血液悪性腫瘍 7例(29.2%)、胆道癌 7例(29.2%)、膵癌 4例(16.7%)、その他の癌 6例(25.0%)だった。さらに悪性腫瘍を有した24例中20例(83.3%)では、菌血症前に化学療法、造血幹細胞移植が施行されていた。また、34例中8例(23.5%)は、ERCP、中心静脈カテーテル留置、心血管外科手術などの侵襲的医療処置の既往があった。34例中14例(41.2%)では、肝胆膵系悪性腫瘍または、肝胆膵領域への侵襲的処置歴を有していた(5) 。 - スコンブロイド食中毒(ヒスタミン食中毒)の原因菌として知られている。魚類、特にサバ科魚類(Scombridae)を摂取し、過剰なヒスタミン曝露により、発疹、蕁麻疹、頭痛、下痢、浮腫、頻脈等の症状が出現する。以前はK. pneumoniaeやK. oxytocaが原因と知られていたが、実際には Raoultella属菌 であったと考えられる(6) 。 Raoultella感染症でもヒスタミン産生により皮膚紅潮を来した症例が報告されているが、報告は少数である。
- R. planticola感染症の死亡率は9.1~15.6%と報告されている(2) 。
【治療】
- Klebsiella属と同様に、多くの抗菌薬に感受性を示す。
- Ambler分類Class A β-ラクタマーゼを産生し、アンピシリンには自然耐性(2) 。
- 多くの株ではセフェム系、アミノグリコシド系、カルバペネム系、フルオロキノロン系に感受性を有する(7) 。
- Ponce-Alonsoらのレビューでは、感受性率は第3世代セフェム 87.5%、Trimethoprim-sulfamethoxazole 83.3%、アミノグリコシド 88.2%、シプロフロキサシン 93%だった(4) 。
- 耐性プラスミド遺伝子を獲得する能力があり、中でもblaKPCなどのカルバペネム耐性遺伝子を持つ株が報告されている(2) 。
【参考文献】
1. Drancourt M, Bollet C, Carta A, Rousselier P. Phylogenetic analyses of Klebsiella species delineate Klebsiella and Raoultella gen. nov., with description of Raoultella ornithinolytica comb. nov., Raoultella terrigena comb. nov. and Raoultella planticola comb. nov. Int J Syst Evol Microbiol. 2001;51:925-932. doi:10.1099/00207713-51-3-925.
2. Appel TM, Quijano-Martínez N, De La Cadena E, Mojica MF, Villegas MV. Microbiological and Clinical Aspects of Raoultella spp. Front Public Health. 2021;9:686789. doi:10.3389/fpubh.2021.686789.
3. Castanheira M, Deshpande LM, DiPersio JR, Kang J, Weinstein MP, Jones RN. First descriptions of blaKPC in Raoultella spp. (R. planticola and R. ornithinolytica): report from the SENTRY Antimicrobial Surveillance Program. J Clin Microbiol. 2009;47:4129-4130. doi:10.1128/JCM.01502-09.
4. Ponce-Alonso M, Rodríguez-Rojas L, del Campo R, Morosini MI, Cantón R. Comparison of different methods for identification of species of the genus Raoultella: report of 11 cases of Raoultella causing bacteraemia and literature review. Clin Microbiol Infect. 2016;22:252-257. doi:10.1016/j.cmi.2015.10.035.
5. Yamamoto S, Nagatani K, Sato T, Ajima T, Minota S. Raoultella planticola bacteremia in a patient with early gastric cancer. Intern Med. 2018;57:1469-1473. doi:10.2169/internalmedicine.9611-17.
6. Kanki M, Yoda T, Tsukamoto T, Shibata T. Klebsiella pneumoniae produces no histamine: Raoultella planticola and Raoultella ornithinolytica strains are histamine producers. Appl Environ Microbiol. 2002;68:3462-3466. doi:10.1128/AEM.68.7.3462-3466.2002.
7. Apinova E, Bowers RC, Somerville A. Urinary tract infection due to Raoultella planticola in a healthy adult: a report of a rare case. Cureus. 2025;17:e83046. doi:10.7759/cureus.83046.
このサイトの監修者
亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長 細川 直登
【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
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