Streptococcus mitis group
5/14のMicrobiology roundではStreptococcus mitis groupを取り上げました。
【微生物学的特徴】
- 他のVGSと同様の性質を持つ:非β溶血性(αまたはγ溶血)。
- 2016年頃から、莢膜を持つ株が多いことが分かってきた。
- ヒトの咽頭に定着しており、宿主免疫から逃れる機序をいくつか持っている。
- AdhesinsやIgA proteaseなどを利用しながら、通常は常在菌として存在している。
- 他の細菌の感染を予防する役割もあるとされている ― IL-8の発現を抑え、Fusobacteriumなどの病原性を低下させる可能性も報告されている。
- ゲノム上は肺炎球菌に非常に近いが、遺伝子の配置や発現の違いにより病原性が異なる。
- “病原性の高い株”が明確に特定されているわけではない。特定の株が人から人へ広がるというより、他の細菌との相互作用の中で病原性を示すようになる報告がある。
【臨床的特徴】
- ヒトの咽頭常在菌として存在するが、特定の状況下で病原性を発揮する機序については、いまだ十分に解明されていない。
- S. mitis groupが原因となる感染症として多いのは、感染巣不明の菌血症と亜急性細菌性心内膜炎である。
- 齲歯に関与するという報告がある。
- VGS全体としては、IEの原因菌の約50%を占める。
- あるフランスの研究によると、IEや菌血症に次いで、腹腔内感染や肺感染が多く、軟部組織や骨感染は比較的稀で、中枢神経系感染は認められなかったが、異なる研究では中枢神経系感染の報告がある。
- 非ベータ溶血性連鎖球菌(NBHS)はそれぞれ好む感染巣があるが、S. mitisは、頻度は異なるものの、それらの感染巣のいずれにも関与しうる。
【治療(IEの場合)】
- 多くの場合はペニシリンで治療可能だが、近年はペニシリン低感受性が懸念されており、感受性の確認が必要である。
- 弁の種類とペニシリン感受性により治療法が異なる。
- 手術の判断は、弁膜症・心不全・感染制御・塞栓リスクなどで決まる。
- 血液培養の陰性化まで1-2日毎に確認する。
- 自己弁IE(native valve endocarditis)は2-4週間の治療となる(大体4週間)。
- ペニシリンへの感受性が良好であれば、ペニシリン又はセフトリアキソン単剤での治療が可能。
- AHAではMIC 0.12 μg/mL以下が感受性良好のカットオフ。
- 単剤で4週間、またはゲンタマイシン併用で2週間。
- AHAではペニシリンG 2400万単位/日も選択肢としている。
- ペニシリン低感受性であれば、最初の2週間はゲンタマイシンを併用し合計4週間とする。
- 人工弁IE(prosthetic valve endocarditis)は6週間で治療し、最初の2週間はゲンタマイシンを足す。
- ベータラクタムを投与できない患者では、バンコマイシンまたはテイコプラニンを代替薬として使用する。
- 2019年のPOET trialでは、安定した左心系IEの一部で、内服治療への切り替えが静注継続に対してnon-inferiorであることが示された。
【まとめポイント/クリニカルパール】
- Streptococcus mitisは、命名当初から分類が難しい菌である。
- 普段は口腔内常在菌であるが、ゲノム上は肺炎球菌に非常に近い。
- 感染症としては感染性心内膜炎および菌血症が代表的である。一方、他のVGSが感染を引き起こし得る部位では、S. mitis groupも原因菌となり得る。
- S. mitisによるIEの治療は、弁の種類とペニシリン感受性により異なる。
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このサイトの監修者
亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長 細川 直登
【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
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