Microbiology Round / Vancomycin-resistant enterococci (VRE)

先日のMicrobiology roundではVancomycin-resistant enterococci (VRE)を取り上げました。

バンコマイシン(VCM)耐性は腸球菌菌血症患者の致死的転帰のリスク予測因子であり、Vancomycin-resistant enterococci(VRE)菌血症に関連する死亡率は高い1。感染症法ではVCMのMIC値で≧16μg/mlと判定された症例について届け出を求めている。米国臨床検査標準化委員会の判定基準では、MICが≧32μg/mlを耐性としているが、この基準では一部のVanAやVanB型を見逃す可能性があるため、日本の感染症法では≧16μg/mlとされている。

【疫学】
VREは1986年にヨーロッパで初めて報告され、1990年代に米国で報告が急増(1989-1993年にかけて0.3%→7.9%)し、とくにICUで増加した2。現在のVREの疫学を以下の図1-3に示す3,4

欧州と米国でのVREの拡散の違い5

  • 欧州:グリコペプチド系薬(アボパルシン)が成長促進薬として動物に投与され、動物由来の食品を食べることでヒトにVREが定着した。現在は使用を禁止されている。耐性については、米国の傾向を追う形になっている。
  • 米国:グリコペプチド系薬が動物に投与されておらず、初期には内因性耐性菌を除きVREは検出されていなかった。院内でのバンコマイシン(VCM)の使用と、セファロスポリン系薬による腸内細菌叢の破壊(dysbiosis)が相まって、VREが広まった。

図1-1. あらゆる年齢の入院患者の血液・髄液から分離された菌株の耐性率 2026.4.4. One Health Trust. ResistanceMap 3

図1-2. あらゆる年齢の入院患者の血液・髄液から分離された菌株の耐性率 2026.4.4. One Health Trust. ResistanceMap 3

図2. 日本:JANISにおけるバンコマイシン耐性腸球菌分離患者数と分離率の年次推移、2007-2023年 4

図3. 日本:JANISにおける都道府県別バンコマイシン耐性腸球菌分離患者数、2017年、2023年 4

【etymology】
entero-:腸(ギリシャ語 enteron) -coccus:球菌(丸い菌)
faecalis 糞・便に由来(ラテン語 faex)
faecium 糞の/便のという意味(faecesの変化形)
gallina 雌鶏 + -arum(属する・由来) ニワトリ由来の
cassel カッセル(ドイツの都市) + flavus (ラテン語)黄色
flavus 黄色+ -escens 〜になりつつある
avium ラテン語 avis(鳥) 鳥の
raffinosus 糖Raffinose(ラフィノース)に由来 →ラフィノースを利用できる菌
durans ラテン語の耐える、持ちこたえる(enduring)→環境に強く、しぶとい菌
hirae 人名由来(Hiroshi Hiraさん)

【微生物学】5,6
E. faeciumE. faecalisよりバイオフィルム形成能は低いもののバイオフィルムを形成する。また、ストレス下で休眠状態になり、その状態では増殖しないため、抗菌薬を回避する。そのため環境で長期間生存することができる。
グリコペプチド系薬は、d-alanyl-d-alanineジペプチドに結合して作用する。腸球菌ではこの標的部位のアミノ酸置換により獲得性VCM耐性が生じる。
腸球菌には、9種類のグリコペプチド耐性が報告されている。(vanA,vanB,vanC,vanD,vanE,vanG,vanL,vanM,vanN)である。関連する遺伝子は、Paenibacillus popilliae (vanF)やStreptomyces coelicolor (vanJ ,vanK)でも見つかっている。vanA遺伝子は通常はプラスミド上にあり、稀に宿主の染色体上にも存在する。vanAは黄色ブドウ球菌のVRSA株からも見つかっている。
腸球菌のグリコペプチド耐性は、内因性耐性と獲得性耐性に分けられる。

■内因性耐性

vanC Enterococcus gallinarum
Enterococcus casseliflavus/flavescens
・隔離必要なし
・VCM低レベル耐性
・TEIC感性
・重篤な感染の報告は稀
・高度耐性の場合はvanA,vanBの獲得を考える必要がある

■獲得性耐性
大部分が、VanA、VanB
VanAはVanSによって制御されている。
(細胞外膜変化→センサーであるVanSが応答調節因子のVanRを活性化させ、耐性遺伝子の転写が開始される)
(VanBにもVanSBとVanRBはあるが、VanSBはTEICを認識しない。)
VanAは、E. faeciumからE. faecalis, S. pyogenes, Streptococcus sanguis, Listeria monocytogenes などのグラム陽性菌へ伝達されうる。
VanBは、ヒトの腸管内で、他の腸球菌や嫌気性菌にも伝達がみられている。

VanA E. faecalis E. faecium VCMに対して高いMIC:64〜>500 TEICに対して高いMIC: 16〜>500
VanB E. faecalis E. faecalis E. faecium VCMに低〜高レベルの耐性
MIC: 4〜>500
TEICには感性であることが多い MIC: 0.5〜2
VCMがTEICに対する耐性を誘導することがある。
VanD,N   E. faecalis VCMに低レベルの耐性 TEICには感性
VanE,G,L E. faecalis  
VanM   E. faecium VCMに耐性 MIC: >256 TEICに耐性 MIC: 64〜>256

・Vancomycin-dependent enterococci (VDE)株:VCM存在下でのみ増殖できる株。(VCMで誘導される獲得型のd -alanine- d -lactate ligaseの働きで増殖が可能になる。)
・Vancomycin-resistant S. aureus (VRSA):非常に高いMICs (32 μg/mL–1024 μg/mL)。腸球菌由来のvanAを持つ。plasmid transfer(less common)またはthe Tn 1546 elementがプラスミドへ転座することで起こっている可能性がある。

【治療】

  • VRE菌血症の治療におけるリネゾリド(LZD)とダプトマイシン(DAP)を比較したいくつかの以前のmeta-analysisではLZDの優位性が示されていたが7,8、より近年のDAP 6mg/kg以上を対象とした研究では有意差はみられなかった9
  • DAP投与量について、CLSIはE. faecium菌血症に対して高用量(8〜12mg/kg)を推奨している。DAPの有効性は用量依存性であり、MICの高い株に対しては11mg/kg以上を提案する専門家もいる10。EUCASTはbreakpointを設定していない。CLSIはE. faeciumとその他の腸球菌で分けてbreakpointを設定。
  • リファキシミンの使用で、DAPの交差耐性が誘導されるため注意。
  • LZDのbreakpointはEUCASTとCLSIで異なる。
  • テジゾリドはLZD耐性株を含むVREに有効な可能性があるが、まだ有効性は確立していない5E. faeciumのcfr遺伝子をもつ株に対してDAPやLZDに劣る11。CLSIはbreakpointをE. faecalisに対してのみ設定。
  • vanB遺伝子保有VRE:テイコプラニン単剤治療はLZDやDAPと比べ30日後死亡率に影響しなかった12
  • difficult-to-treat VRE:腸球菌は治療中に耐性を獲得する傾向があり、腸球菌の重篤な感染症では1剤では不十分という議論がある。difficult-to-treat VREによる感染症でDAP とβラクタム系薬(とくにABPC)の併用の相乗効果が報告されている11
  • ファージ療法の研究が進行中。LZD,VRE耐性株に感染できるファージを分離13

図4. difficult-to-treat VREに対する治療の提案10

【参考文献】
1) Rödenbeck, M. et al. Clinical epidemiology and case fatality due to antimicrobial resistance in Germany: a systematic review and meta-analysis, 1 January 2010 to 31 December 2021. Euro Surveill. 28, (2023).
2) MMWR weekly August 06, 1993 / 42(30);597-599. Nosocomial Enterococci Resistant to Vancomycin -- United States, 1989-1993
3) One Health Trust. ResistanceMap: Vancomycin .2026. https://resistancemap.onehealthtrust.org/AntibioticResistance.php. (2026.4.4)
4) JIHS 感染症情報提供サイト. https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idss/target-diseases/vre-infection/article.html. 国内におけるバンコマイシン耐性腸球菌の分離状況及び感染症届出状況の経時的増加と地理的拡大, 2007~2023年(2024年2月1日時点)
5) Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases
6) Radford-Smith, D. E. & Anthony, D. C. Vancomycin-Resistant E. faecium: Addressing Global and Clinical Challenges. Antibiotics (Basel) 14, 522 (2025).
7) Chuang, Y.-C., Wang, J.-T., Lin, H.-Y. & Chang, S.-C. Daptomycin versus linezolid for treatment of vancomycin-resistant enterococcal bacteremia: systematic review and meta-analysis. BMC Infect. Dis. 14, 687 (2014).
8) Balli, E. P., Venetis, C. A. & Miyakis, S. Systematic review and meta-analysis of linezolid versus daptomycin for treatment of vancomycin-resistant enterococcal bacteremia. Antimicrob. Agents Chemother. 58, 734–739 (2014).
9) Shi, C. et al. Efficacy and safety of daptomycin versus linezolid treatment in patients with vancomycin-resistant enterococcal bacteraemia: An updated systematic review and meta-analysis. J. Glob. Antimicrob. Resist. 21, 235–245 (2020).
10) Chuang, Y. C. et al. Influence of daptomycin doses on the outcomes of VRE bloodstream infection treated with high-dose daptomycin. J. Antimicrob. Chemother. 77, 2278–2287 (2022).
11) Turner, A. M. et al. Therapeutic approach to difficult-to-treat multidrug-resistant enterococcal infections. Antimicrob. Agents Chemother. 69, e0106024 (2025).
12) Xie, O. et al. Epidemiology, treatment and outcomes of bloodstream infection due to vancomycin-resistant enterococci in cancer patients in a vanB endemic setting. BMC Infect. Dis. 20, 228 (2020).
13) Wandro, S. et al. Phage cocktails constrain the growth of Enterococcus. mSystems 7, e0001922 (2022).

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育