Mycobacterium tuberculosis

3月24日が「世界結核デー」ということもあり、先日のMicrobiology roundではMycobacterium tuberculosisを取り上げました。

【疫学】
WHOの報告では2024年に結核で123万人が死亡しており、結核は単一の感染性病原体による死亡原因で1番多いとされている。結核発症患者の多くは東南アジア、西太平洋、アフリカに集中している。国別では、インド(25%)、インドネシア(10%)、フィリピン(6.8%)、中国(6.5%)、パキスタン(6.3%)、ナイジェリア(4.8%)、コンゴ民主共和国(3.9%)、バングラデシュ(3.6%)で多い(※1-2)
日本では2024年の報告によると、年間1万人以上が新規に結核を発症し約1500人が死亡している。2021年に人口10万人あたりの罹患率が9.2となり、低まん延国の基準である10を初めて下回った。その後も減少傾向を示し、2024年には8.1まで減少している(※3)

【微生物学的特徴】
◆ 分類
門:Actinomycetota 綱:Actinomycetia 目:Mycobacteriales 科:Mycobacteriaceae 属:Mycobacterium
◆ 命名
Myco-:ギリシャ語のmyces(真菌)に由来し、液体培地の表面にカビ様のペリクルを形成して増殖する性質を反映して命名された。
acterium:ギリシャ語の bakterion(小さな棒)に由来し、「桿菌」を意味する。
tuberculosis:ラテン語の tuberculum(小結節)に由来し、結核病変である結核結節(tubercle)を指す。
◆ 歴史(※4)
古代エジプトのミイラの組織から結核菌の遺伝子が検出されるなど、結核は人類史において古くから存在する感染症である。1882年3月24日にドイツのHermann Heinrich Robert Kochが結核菌を発見したと世界に向けて報告した。1950年に初めての抗結核薬であるストレプトマイシンが報告されるまでは有効な治療薬はなかった。
◆ 特徴
M. tuberculosisは偏性好気性の抗酸菌であり、芽胞、鞭毛および莢膜は形成しない。細胞壁に脂肪酸であるミコール酸を豊富に含むためグラム染色の染色性は不良である。そのため、不明瞭(ゴースト像)または不均一に染色されたグラム陽性桿菌として観察される。これは、水溶性であるクリスタルバイオレットやフクシンが、ミコール酸の存在により菌体内へ浸透しにくいためである。チール・ネルゼン染色で使用される石炭酸フクシンはフェノールを含むため脂質親和性が高く、染色時に加温することでミコール酸が可溶化して色素が内部へ浸透する。冷却後にミコール酸が再凝固することで塩酸アルコールによる脱色抵抗を示す。菌体は直線状または軽度に湾曲した桿菌として観察される。
M. tuberculosisは増殖速度が遅く、1回の分裂に約15~20時間(E. coliは約20分)を要する。小川培地上では2~3週間で淡黄色のR型コロニーを形成する。
国際原核生物命名規約(ICNP:International Code of Nomenclature of Prokaryotes)に基づき有効に公表されている結核菌群(M. tuberculosis complex)は主に次の6種である。M. tuberculosis(ヒト型)、M. africanum(アフリカ型)、M. bovis(ウシ型)、M. caprae(ヤギ型)、M. microti(野ネズミ型)、M. pinnipedii(アザラシ型)。その他、正式な菌種ではないが、研究や系統解析で結核菌群として扱われている菌種は主に次の4菌種である。M. canettii、M. mungi、M. orygis、M. suricattae。

【参考文献】
※1 WHO Tuberculosis
※2 Global tuberculosis report 2025
※3 2024年結核登録者情報調査年報集計結果
※4 Daniel TM. The history of tuberculosis. Respir Med. 2006 Nov;100(11):1862-70.

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育