Microbiology round

本日のMicrobiology roundは、胆管炎による敗血症性ショックの患者の血液培養から発育したShewanella putrefaciensを扱いました。
Shewanella:アメリカの海洋微生物学者James Shewanから
putrefaciens:腐敗を意味するputridから。魚が腐敗する

  • ブドウ糖非発酵Gram陰性桿菌
  • 海洋環境に存在し、海水、淡水、土壌、油田などに分布。
  • ヒトから分離されるShewanella属は、Shewanella algaeと、Shewanella putrefaciens。
  • Shewanella putrefaciensの歴史;1931年に腐ったバターから分離された最近をAchromobacter putrefaciensと名付けた。→Pseudomonas putrefaciens→1985年に新属Shewanella属に。

【微生物学的特徴】

  • ブドウ糖非発酵GNRにおいて唯一硫化水素を産生する菌種。
  • 単極鞭毛を有しており、芽胞形成なし。
  • Gram染色では短いものから長いものまでありフィラメント状のことも。
  • Shewanellaの多くは重金属や防腐剤に耐性があり、厳しい環境での生存が可能

<Shewanella algaeと、S. putrefaciensの鑑別はどうする?>

  • 大部分の同定機器(MALDI-TOF-MS含む)やキットでは、S. algaeに関するデータベースが不十分で、S. algaeをS. putrefaciensとご同定する可能性がある。
  • 鑑別のポイント:42℃での発育、ヒツジ血液寒天培地の48時間後のβ溶血、SS寒天培地の発育。
  • S. putrefaciensは、42℃で非発育、ヒツジ血液寒天培地の48時間後のβ溶血なし、SS寒天培地で非発育。
  • SS寒天培地はサルモネラとシゲラの発育専用、硫化水素産生菌(サルモネラの多く)は黒くなる。

【臨床的特徴】

  • 報告されるShewanella属の多くはS. putrefaciensであるが、S. algaeがデータベースに含まれていないために誤同定されている可能性。多くはS. algaeによって引き起こされると考えられる。
  • 海水の濃度や塩分濃度に関連して、温暖な気候で発生する。
  • ヒトに感染症を起こすことはまれ。
  • ヒトの感染症では、腹腔内、皮膚軟部組織、血液、喀痰から分離。髄膜炎、脳膿瘍、眼内炎なども。
  • リスクとなる基礎疾患:悪性腫瘍、胆道系疾患、胆道での保菌、糖尿病。海水暴露
  • Shewanella菌血症は、複数菌菌血症が多く、多くは皮膚軟部組織感染症、胆管炎。
  • 薬剤感受性:ペニシリン系や第一世代セファロスポリンには耐性が多い。殆どの第3世代、4世代セファロスポリンに感性であると報告されている。

※ブドウ糖非発酵菌だが、報告ではCTRXも含めた3rdセフェムに感性と記載されている(今回は耐性)

  • ベータラクタマーゼや多剤排出ポンプで一部の抗菌薬には高いMICを示す。
  • ピペラシリンタゾバクタムやイミペネムは治療中に耐性が出現することが報告されている。

    同じブドウ糖非発酵GNRである緑膿菌に似ている?

このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育