Microbiology roundでCandida lusitaniaeを取り上げました

Candida lusitaniae
〜アムホテリシンBに耐性を示す、出現頻度も稀なCandida

【歴史】1959年にポルトガルの微生物学者のNicolau van Uden(1921-1991)が温血動物の消化管から分離し報告した。

【微生物】(1)

  • C. lusitaniaeは楕円形か細長く、狭い基部に多面的な出芽をし、仮性菌糸を生じる
  • コロニーは白色からクリーム色で、スムースで光沢があるが、時にはdullなこともある
  • ヒトの消化管の常在菌
  • 同定は、CHROMagar Canidida培地ではGrayish purpleからPinkのコロニーとなりC. glabrataと誤同定された報告がある。MALDI-TOF MS(Vitec MSでもBruker Biotyperでも) ITS sequencingと比較してN=12で100%一致していた報告もあるが(2)、C. orthopsilosi (Vitec MS)やExophiala(Bruker Biotyper) をC. lusitaniaeと誤同定するなどの報告もある(3)。

【臨床像・毒性】

  • 主に悪性腫瘍の患者に真菌症を引き起こす。その他、腹膜炎、急性胆嚢炎、尿路感染症、髄膜炎、皮膚軟部組織感染症、感染性心内膜炎、肺炎、骨髄炎、化膿性関節炎などの感染症を引き起こすことも報告されている。
  • Candidemiaの中で、1.3-2%程度とされ、稀 (4)

【治療・耐性】

  • 抗真菌薬の作用機序(下図:5)(図は参考文献をご参照ください)
  • C. lusitaniaeはアムホテリシンBに耐性傾向があることが1番の問題
  • 細胞膜の構成成分であるエルゴステロール生合成遺伝子ERG6遺伝子(erg6)の発現が増加し、結合性の変化に?よりアムホテリシンBに対しての感受性が低下していることが推定されている(6)。

●感受性検査

  • CLSIでもEUCASTでもC. lusitaniaeの抗真菌薬に対してのMIC break pointは設定されていない。
  • Candida spp. に対しての微量液体希釈法の判定(下図: 7)(図は参考文献をご参照ください)
    最小発育阻止濃度の読み取りは、培養24時間後にウェルの濃度を分光光度計で測定して判定。アムホテリシンBでは完全に発育が阻害(>90%)されたウェルを、それ以外の抗真菌薬では50%阻害されたウェル(IC50)をMICとする。
  • 今回の株のMIC値
    AMPH-B:0.5, 5-FC:≦0.125, FLCZ:1, MCZ:1, MCFG

●治療

  • 稀なため標準治療は決まっていない。フルコナゾールは有効と考えられている。
  • C. lusitaniaeに感染した好中球減少症患者にアムホテリシンBを単剤で投与するのではなく、フルコナゾールに置き換えるか併用することが望ましい。好中球減少症でない患者や固形癌の患者では、フルコナゾールを単剤で使用することが妥当であろうとの報告がある(4)

(1) Jorgensen, J.H., et al., Manual of Clinical Microbiology, Eleventh Edition. 2015: American Society of Microbiology.
(2) J. Microbiol. Biotechnol. (2016), 26(12), 2206-2213
(3) Medical Mycology, 2018, 56, 816-827
(4) Clinical Infectious Diseases 2001;32:186-90
(5) International Journal of Antimicrobial Agents 50 (2017) 599-606 (6) Antimicrob Agents Chemother. 2003 Sep; 47(9): 2717-2724.
(7) 臨床検査 64:778-785,2020

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このサイトの監修者

亀田総合病院
臨床検査科部長、感染症内科部長、地域感染症疫学・予防センター長  細川 直登

【専門分野】
総合内科:内科全般、感染症全般、熱のでる病気、微生物が原因になっておこる病気
感染症内科:微生物が原因となっておこる病気 渡航医学
臨床検査科:臨床検査学、臨床検査室のマネジメント
研修医教育